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土曜日

売野先生の新刊短編集を読んだ方ひとりひとりに、「あれは銀土銀に見えませんでしたか?」とアンケートをとりたい。
それはさておき、売野先生の作風はオオシマユミコ大先生を思わせるなあ・・・と思っていたら案の定、検索の関連キーワードが「皆考えることは一緒だな」という状態に。わかるわかる~う。

折り畳みで小話です。女子沖+マダオ。
「お嬢ちゃんさあいいかげん帰らないとおうちの人心配するよぉ」

精一杯の猫なで声でオネガイするも、その美少女はじっと上目づかいで俺を見るだけ。
テーブルの上に、一口分残したミルクティー。短く揃えた髪の毛は同じ色だった。
携帯電話が時々ピコピコ光って着信を知らせるけど、一瞥しただけで通話もせずに放置する。待ち人ではないらしい。

ひと組のカップルが帰り支度を整えて、店を後にした。
閉まりかけの自動ドアにご挨拶の声を投げかけて、営業スマイルを引っ込めれば、残りの客は一人だけ。
伝票はとっくに精算済みで、カップをさげていいか尋ねるとあっさり了承してもらった。

何度か銀さんと一緒に来店したことがあるのは覚えていたけど、それだけだ。俺はこの子の名前も知らない。
席の対面に座らせて、「キミ」とか「アナタ」とか呼んでいた記憶が蘇る。緊張感のある一時。頷く美少女。
たぶん銀さんの事務所から売り出す、モデルさんの卵なんだろう。
銀さんは何回か面談をして適性を見て、それから契約するかどうか決めるって言ってたから。

「銀さんのこと待ってても今日は来ないと思うよ」

「ここで待つより事務所の留守電にでも伝言残しといたほうが早く連絡つくんじゃない」ためいきまじりにそう言うと、こぼれそうなほど大きい眼を更に大きく開いて、「オジサンなにか聞いてんの」って。
あまりに必死な様子に、つい口を滑らす。

「嫁さん産気づいたって話だよ。だから、」
「嫁、って。旦那、ケッコンしてたの」
「ああ、うん」
「指輪してない!」
「そうみたいね・・・・・・」

なんかやばいこと言っちゃったかも、とどっと汗が噴き出る。
ふらふらと席をたつ美少女に、またのお越しをお待ちしておりますだなんて言えそうもない。
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