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金曜日

眠かったんです。とんだ狼少年発言してまってすみませんっした <続きうんぬん
ほんと異常な眠さだったのはたぶん三食カレーだったせいだな、と思っているんだがどうか。



折り畳みで小話です。



 


鯛焼きの頭だとかしっぽだとか、そういうことに拘ってる奴ぁ器が小さいんだそうだ。
「だって甘い小豆餡ともちふわ炭水化物のコンボだよ。どういう方法で食べようがまずくなる理由がないんだよね」
じゃあ餡子を飯にかけて食ってみたらいいなじゃねーですか、と投げやりな提案をしたら「それ俺の定番」と返されて何も言えなくなった。眼鏡やチャイナは旦那のことをもっと気にかけてあげればいいと思う。

旦那がこんなに長く喋ってくれるのは珍しい。たいてい俺には見えない腕時計を忙しそうに確認して「それじゃあ銀さん急ぐから」なんつってそそくさと逃げ出すのに。
気を使わせているのかもしれない。いろいろ情報通みたいだから。

「俺は元気ですよ」

袖を引っ張ってそう言ったら、螺子仕掛けのおもちゃみたいに旦那の動きがぴたりと止まる。
俺はにこりと笑ってみる。せいいっぱい、てやつだ。

「って、最近仲良しだっていうその誰かさんにつたえといてくだせェ」
「いやいやいや。何が悲しゅうてお前らのもじもじメッセンジャーやらなきゃなんねーのよ」
「土方さんの甘やかしにはもう辟易してんでさァ!」
「俺に切れられてもなぁ」

とかいいつつ旦那は、肩で息をしている俺を置いていってしまったりしなかった。
俺は身長が何センチか縮んだような気になる。

「そのくせ、知らないふりするんですぜ、ぜんぶ」
「うん」
「土方さんが、これやったあれやったって認めてくれれば、俺だって、いらねーことすんじゃねえって怒ったり、できんのに」

旦那がうんうんと頷きながらきいてくれるので、俺はこの間のことを全部きいてほしくなった。
逃げ出さない今日の旦那はやっぱり優しかった。

熱が下がって起きてみれば、部屋はあちこち手入れされていた。
吐いて汚したはずの床は洗剤の匂いがしていたし、流しにつけっぱなしになっていた、ただひとつのマグカップも、網棚に逆さになっていた。
俺が着てた、ぐでぐでの雑巾みたくなってたはずのシャツも、ずっと前に近藤さんにもらって箪笥にしまったままだった「猿祭」とプリントされたTシャツに変わっていたし。

「母ちゃんみたいなやつだね」と旦那が評したので、俺は、母ちゃんでもねーのにご立派ですよ、と言って、「見返りもねえのに」と付け足した。なんだかむなしくなる。気が遠くなるくらいむなしい。弱っているせいかもしれなかった。

「素直じゃねえから、いっつも肝心なところで幸せになれねーの、あの人」
「それは、お前もね」
「わかってらァ」
「ありがとうくらいは直接言っていいんじゃないの。空振りでもさ」
「仲良しのくせに伝言してくんねーんですか」
「引き受けてもいいけど『愛してるって言ってたよ』とかって盛るよ?それでいいなら」

それはとっても困るので、俺は早々に屯所に顔を出すことにした。
一人暮らしにもう音をあげたの、って皆に笑われるかもしれないけれど、それでいい。
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