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日曜日

今日も寒かったね・・・

折り畳みで小話だけど限りなくポエムなので適当にお願いします。

二度目の賭けだった。
土方は当馬の件を荒立てない。そっちに賭けた。

まだ人死にが出ているわけではない。
これまで年単位で継続的になされてきた武器の密輸入をようやく叩こうというのだ、ことを慎重に運ぶに越したことはないじゃないか。
とくに今回は、上から圧力を掛けられたわけでもない。
別件の捜査で人も足りていない。ほら、なにも焦ることはない。

半年あればミツバは当馬の家に嫁いで、順当に子をなして家に根を張れる。

それが。

(糞野郎が)

台無しだ。
当馬は明日にでも罪人の名を被る。

悪意があっての行動じゃないというのが更に苛立ちを募らせる。
愛した女が、悪徳商人に利用された末に捨てられる。しかもその女は死期が近いときた。そのシナリオにひどく同情して、張り切ってしまったのだろう。読みが外れた。当ても外れた。やってられない。

(土方なんて死ねばいい)

なにも背負ってくれないくせに。
奪うだけで、なにも与えてくれないくせに。



+++



手を握った。
頬を寄せる。しがみつく。なんとかならないかなあと祈りと淡い期待を込めて、唇を落とした。
それとも単純に、体温を感じたかったのかもしれない。近くに。

「間違えちゃったね」
「いいえ」
「そーちゃん、ねえそーちゃん、もっとちかづいて」
「はい」
「でも・・・ねえ、間違えたけど、これでよかったとも思ってるの」
「・・・」
「わたしたち、だめね。だめなところも似ていたわ。趣味が悪いところも。ね」
「―――おねえちゃ、」
「大好きよ」

自慢の弟だといって笑う。
笑ってくれたのに、笑い返せなかった。それが心残り。



+++



携帯電話が点滅したので手に取って、一応確認してまた放り投げた。
「なんか緊急か」聞かれたので、沖田は一応答える。

「誕生日おめでとうだそうで」
「あーそりゃあおめでとう」
「どうも」
「女?」

面白くて仕方ないという顔の土方に、にやりと笑みだけ返す。

沖田は心の中でそっと軽蔑する。
ついさっきまで寝ていた相手にいう台詞か。しかも寛容さを滲ませて。
駆け引きなのかなんなのか知らないが、性根が腐っていると思う。
前はもう少し違ったと思う。もっと直情的で、捻くれていなかった。

「お前もとうとう二十歳か」
「そうですねえ。煙草でも嗜みましょうか」
「やめとけ。似合わねえよ」
「あ、キャラ被り懸念なさってやすか。大丈夫あんたにはまだマヨラーっていう扱いづらい個性がありやす。誰も足を踏み入れたくない聖域。ご心配なく」
「いいんだよそれは。で?女なのか」

なんだしつこいな。
沖田は少しうんざりして、「いいえ」と返す。
聞いたくせして土方は、興味なさそうな素振りでささやかに笑うと、今度こそ煙草を探り出す。

身支度をしながら沖田は部屋を眺める。
見慣れた、土方の私室。
作りかけの書類。手入れの済んだ刀。趣味じゃない小さな写真立ては土産物だった。
脱ぎ散らかした夜着に灰皿。酒瓶、一口だけ残ったコップ。
挨拶をしよう。

「土方さん」

外が白んでくる。

「二十歳になったら消えますね」

土方のぽかんとした顔。なにが、と小さく零れた疑問は最もで、でも曖昧にする。

「俺ね、結構気に入ってたんですこの身体。むかし姉上もそう言ってやした」
「は?」
「もう少し持ちがよけりゃあ文句なかったんですが仕方ない。もともと俺のは二十歳までっていう期限つきでした」

ミツバの身体はもう少し長かったはずで、だけど耐えられる限りは使い続けたくて決断を引き延ばした。挙げ句、逃げ遅れた。
俺もそれでいい。
こういうのって、一度きりだからいいんだ。姉上もそうだったんじゃないかな。やり直したくなんてなかったんだ。

そろそろ日が昇る。
夜は去って朝が来る。新しい一日が始まる。

「なに言ってんだ総悟」
「そういうふうになってるんです。」

沖田は、ミツバとの暮らしのことを話した。
まるで懺悔みたいだなと思いながら。
土方は黙って聞いていた。

「俺も、姉上も、近藤さんのことを選ぼうとしてました。
だけど考えて考えて、その結果、一緒に生きられないなって。あの人は選べないし選んじゃいけないってよく二人で話してたんです。だっていい人過ぎるから。
暢気だったんですよ俺たち。もう少しあとでいいやって目を背けて日常に浸ってるうちに限界が来て、慌てた時にはもう間に合わなかった。俺がもっと注意していればよかった。もっとそばにいて、・・・もしかしたら、あの家に残っていればよかったのかもしれない。
先のことなんてわからなかったから、なんとなく江戸に出てきちゃって。いいえ、近藤さんから大役を仰せつかって、隊長として剣振るって・・・そういうのは楽しかったんです。誇りでしたよ。
恵まれていたんでしょうね」

もちろんいいことばかりではなかったけれど、だけど。
強く憎んだことも、ささいな煩わしさも、軽蔑も、すべて塗り替えてしまう感情がある。
二人揃って、一番信頼していたのと別に、一番焦がれた人がいた。
想いを返して貰えないのは承知で、でもどうしようもなかった。
ほんと厄介で愚かしい。
それでも、悪くないと今は思える。

「俺は今日で終わりです。朝になれば消えてしまう。だから最期に土方さん、あんたに会えてよかった。あんたの顔を見れてよかった」

眩む。

「俺たちはあんたのことが好きでした。とても」

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