日曜日 夕方のアニメを観ながら「いやキミさー、感受性豊かなのはいいけど行動する前にちょっと考えるとかもう少しどうにかできない?」と主人公の行動に文句をつけています。まんまと感激して泣きながら。いや~後先考えない若者の姿ってのはイイネ!折り畳みで小話です。土沖です。 久しぶりの夜遊びだった。髪の毛に甘い香が纏わりついて鬱陶しい。やっぱり切ってしまおうかという考えが頭をかすめて、でもやめる。あの童顔の上司の度重なる苦言に屈したように思われるのは癪だった。軋む木戸を押して敷地に足を踏み入れると、見張りの隊士が一瞬反応する。軽く手を挙げて挨拶すると、「隊長でしたか」と一礼された。立ち話をする気もないので、さっさと部屋に戻ろうと裏庭を突っ切る。「あ」たぶん気付いたのは同時だったが、先に声をあげたのは山崎だった。「なんだびっくりした。土方さんでしたか」「なんだはねえだろ。なにしてんだ、まだ仕事か」「夜食だけ運んだらもう休むところです」誰の、と尋ねるまでもない。この先にあるのは副長室くらいだ。盆の上に載せたお茶と駄菓子は、沖田のためのものなんだろう。ガキくせぇ、と呟くけれど、山崎はにやにやしたまま、とくに言い返さない。「なにお前、沖田に弱味でも握られてんの」「まさか」「こんな夜中までこき使われて、お前も気の毒にな。気に入らねえんだよあいつ。近藤さんと付き合い長いのをいいことにやりたい放題。現場にしゃしゃり出てきた挙句、突入早めろだあいつは斬るな、どいつを先に拘束しろって人のこと顎で使いやがって。仮にも上司だから多少無理して従ったがあんなのが続いたら耐えられねえ。こっちにはこっちのやり方があるってんだよ」「あー今日は大変でしたねえ。愚痴が出ちまう気持ちもわかりますが、まあ、怪我もなかったし犯人も捕まえたしで結果オーライじゃないですか」「てめえ呑気だな。上の横暴に振り回されるこっちの身にもなれ」「多少無理をいうのも土方さんの実力を見込んでのことじゃないですか。それだけ副長に重宝がられてるってことですよ」「・・・お前あいつのお気に入りだもんな。評価甘くなってんじゃねえの?」「あなたもですよ」「は?」「あなたこそ、副長のお気に入りですよ。チャラチャラしてるわりには、紙仕事も几帳面に仕上げるし勤務態度も至って真面目。喧嘩っ早いところはあるが同僚の評判も上々。隊長として申し分ない。―――だそうです」軽く微笑んで山崎はいう。「わかっていないんですねえ。まあ、そのほうが好都合ですが」★食堂に備え付けられたコーヒーサーバーの前で、半分寝ているような沖田がカップを握り締めている。コーヒーを床に流すかカップを落とすかどっちが先か。あんまり悠長な性質じゃない俺は、沖田の手からカップを奪い、かわりにコーヒーを淹れてやる。ほらよ、と手渡すとようやく覚醒したらしい沖田が、「どういう風の吹きまわしだ」とでも言いたげな顔で凝視してくる。「おお土方じゃん。今朝も鬱陶しい長髪ご苦労さん」「うるせえ」「声を張り上げんなバカ、こっちは徹夜明けであったまいてーんだよ」妹に作ってもらったとかいう頓狂なアイマスクを首から下げて、眉間に深い皺を刻んでいる。美形だし背も高いし収入もいいってんでそこそこ女受けがいいらしいのにいまだ独身なのは、重度のシスコンだからだっていう噂が頭をよぎる。黙りこむと、なにか勘違いしたのか沖田が驚いた顔をする。「今日はだいぶ従順だなァ?ついに俺の支配下に落ち着くハラを決めたか感心感心。じゃあついでに髪切れよ」「毎日毎日しつけーな・・・別に規則違反じゃねえだろ」「長い髪は趣味じゃねーもん」「てめえの趣味なんざ知るか」「だから声でけえんだよバカ・・・」ふと気配に気付いて見渡すと、うっとりした顔の隊士どもがこっちをちらちら見ている。「やっべ、俺も髪切ろう」なんて声まで聞こえてきた。どうも、まわりは敵ばっかりらしい。 PR