木曜日 「雌堕ち」て言葉を見たときはうわ~うまいこと言うなあと感心したものだった。 情感あふれるいい日本語。 折り畳みで小話です。 どうも総悟が冷たい気がして、でもそんなの前からだろうと言われればそのとおりだったので、それもそうだと放っておいた。 だけど日を追うごとに蔑む目つきはきつくなり、舌打ち溜息当たり前になったのでこれはいかんと、すれ違いざまに生意気な総悟の腕を捻り上げた。 「・・・・・・変態!」 あっけにとられた俺は、誰が変態だ取り消しなさいと至極当然な、毅然とした大人の態度を取るのも忘れて、総悟を黙って外に逃がした。 「―――ということがあってな。」 馴染みの、といっても数カ月ぶりに訪れた女の部屋で、俺は愚痴をこぼしていた。 わけがわからん、と同意が欲しいわけでもなくただなんとなく披露した話に、女はぷっと噴き出すと、「ごめんなさいね。それ、わたしのせいだわ」と言う。 「この間、その僕ちゃんのお相手したのよ。あの冗談を真に受けたのね」 「相手って、あいつ、ここに来たのか」 「そうよ。でもね、土方さんの弱味を知らないかってお茶も出さないうちからせっつくもんだから、『あのひとは縛られたまま、裸足の足の裏でなぶられんのが好きなのよ』って嘘教えたら、絶句してた。かあわいいの。」 「じゃあ別に寝てないのか」 「寝たわよ。縛ってあげようかって聞いたけど、ふつうがいいって断られちゃったわ」 そのあと、俺はその女を「ふつう」に抱いた。 足だの腹だのを触りながら、あいつはうまく出来たんだろうかとおせっかいにも程がある想像をめぐらして、集中できなかった。 いちいち総悟の顔がちらついて。困る、こういうのは。 もう来ないでねと女が言った。 もう来ないだろうなと俺も思った。そんな趣味だと思わなかったわ、と毒づかれたのも仕方がなかった。 行為の最中、俺はうっかり名前を呼んだ。ちらついた顔があまりにうるさくて、呼んでしまったのだうっかり。 せめて多めに札を置いて、部屋を出た。気休め。 「変態のご帰還だ」 屯所に帰ればこのとおり、総悟の罵声に出迎えられた。 俺はほっと息をつく。 もうこの冷たい目なしじゃ生きていけない気すらしている。 PR