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『そちらに在籍しているミツバ嬢を××区で保護しました』
電話があったのは昼だった。
その男は一目見て『彼女』のことがわかったのだという。随分衰弱しているようだったので、まずは療養させてから改めて今後のことを考えたいと。
店の端末で個人情報台帳にアクセスする。「申し遅れましたが」と名乗られた男の名を検索すると、意外にもすぐに該当者が引っかかった。
「げえ」
いくら長寿で再婚が盛んな現代といっても、離婚歴九回はそう見ない。
性格問題あるんじゃないの、と思って他の項目を洗えば、警察幹部の経験があるようだ。
しかし、どこかで見たことがあるような―――画像が荒くてはっきりした顔が確認できない。でもこの名前は・・・・・・
「ママ、ミッちゃん見つかったって?」
末っ子体質のヘルプのコがオーナー室の扉にしがみついている。普段寄りつかないくせに、まったく耳聡い。
「見つかったわよ。しかも男つきでね。あんた、店でスピーカーになっておいで」
「ヤダぁ、それってもしかして、運命の?」
キャーと黄色い悲鳴を上げてヘルプの子はばたばたとフロアに戻っていった。時間差で歓声が弾けるのが聞こえた。地鳴りのような声をとどろかせたのは客の皆皆様だろう。ほんと、愛されていること。
「ママ!」
入れ違いで飛びこんできたのはうちの売れっ子だ。カーラーも外さずに、肩で息をして。
「入室はもっと優雅にっていってるでしょうまったくどいつもこいつも」
「今日くらいいいじゃない。ねえママ、皆でミッちゃんのお見舞いに行こうよ」
「はあ~!?冗談じゃねえよ。今駆けつけたりなんかしたらさっぶいラブシーン見せられちゃうじゃん!」
「じゃあもう少ししたら快気祝い送ろうね」
「あーっもう。信じらんない!信じらんないわもう!!」
奇跡ってあるのねと店のオンナノコがいう。
ばかねそんなんないわ。運命も奇跡もないの。数字と歴史を嫌う人間が、ただの偶然にそういうロマンチックな名前をつけただけ。
だけど真実の愛くらいなら信じていいかもしれない。そう思うわ。
俺は今夜開けるシャンパンの瓶を選ぶことにした。