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日曜日

折り畳みで小話です。

大島弓子先生が大好きです。某作品のオマージュになっているので作品名がわかった方は私と握手。
真選組がなくなったので中の人間はそれぞれ、田舎に帰って稼業を継ぐとか国の軍隊に編入できるよう上に口利きしてもらうとか自分探しの旅に出るとか忙しく身の立て方を考えていて。
憤りと寂しさと、やり切れなさはあるだろうが皆なんとか感情には折り合いをつけて、ちょっと強がった明るい顔をして、次の道に進んでいるようだった。

近藤さんは松平のとっつぁんのところに婿入りして、栗子殿栗子殿と毎日幸せそうだ。
「毎日お弁当作ってくれるんだよね」はにかみながら見せてくれた愛妻弁当の写真には、、黒い塊が写っていた。
うちの奥さん料理はちょとだけ苦手なんだ、と舌を出す。前の想い人といい妻となった女性といい、近藤さんという男はそういう星のもとに生まれたのかもしれない。

「いや~近藤さん羨ましいなァひゅーひゅー」

すっかりがらんとしてしまった屯所の居間で、総悟が段ボールに封をしながらいう。
心が籠ってねえんだよ、といいそうになって思いとどまる。開きかけた口に煙草を挟みこんで火を探す。
近藤さんはそうだろそうだろ、と嬉しそうに若い妻の引き起こしたちょっとした家庭内事件簿を披露する。つまりのろけだ。

「おっと、俺の話ばっかりしてるなすまん」
「ぜんぜん構いやせんぜ」
「それで結局、総悟これからどうするの」

本題だった。皆がそれなりに行き先を告げて巣立っていく中で、総悟だけ、これからのことをなにもいわない。
誰も路頭に迷わないようにと手を尽くして心を砕いてくれた近藤さんにとって、たぶん最後に残ったなによりの心残り。

「内緒でさァ」
「いやいやいや。そろそろ教えてくれてもいいじゃない。な?」
「内緒ったら内緒でィ。だーいじょうぶ、あてはあるんでさァ」

えーえーいいじゃなーい、だめーと女学生のようにごつんごつんと肩をぶつけあって、でかい図体の男二人が。
俺は柱に背を預けながら、ああこの柱に傷を付けることも凭れかかることももうなかろうなとちょっと感傷に浸っていた。
ここで吸う煙草も、ここの畳に自分の影が伸びるのを見ることも。ここで二人の声を聞くことも。「近藤さん。」総悟が改まった声を出す。意識を引かれて俺も、思わず姿勢を正した。

「そのうち落ち着いたら知らせんで、なにとぞご容赦くだせェ。近藤さんには最後まで心配かけて、申し訳ねえと思ってやす」
「・・・・・・そうか」
「土方さんにも、まあ気が向いたらついでに」
「ついでかよちゃんと連絡しろよ」
「近藤さん差し置いて真っ先に連絡されてもビミョーでしょうが。出しゃばりだなァ土方さんは」
「んっだよじゃあ別に無理して教えてくれなくたってなあ、」
「はいはい、喧嘩腰にならない!」

笑いながら近藤さんが仲裁して、俺と総悟はたがいに攻撃的に掴み合っていた腕を離す。
残り少ないここでの日常を惜しむ気持はあるのにどうしてか、こうしていつもどおりになってしまう。けどいつもどおりに過ごせるのがなによりなのかも。

「総悟はちゃんとトシにも報告いれること。いいな?」
「・・・・・・へい」
「よし!」

こうして和やかに、三人一緒の時は過ぎた。
近藤さんは電話で呼び出されて、忙しく本庁へ帰っていった。またゆっくり飲もうなと言い残して。
総悟は再び段ボールにかかって、俺に背を向ける。その背に向かって話しかけた。

「約束破るなよちゃんと教えろよ」
「わかってやすって。しつこいなァ」
「俺だってお前のこと心配してんだからな。どっかで人知れずのたれ死んだりしたら、なあ」
「近藤さんが悲しむ?」
「皆も悲しむ。そして俺が怒る」
「わかっちゃいやすけどねえ、そればっかりは」

もう上司でも部下でもないし、仲間でもない。強いていうなら幼馴染か?なんて頼りない。

総悟は着々と梱包を済ませて、「ほいじゃ。」と軽く手を挙げて屯所を出て行った。
俺も「おう」と返した。今生の別れみたいにしたくなかった。



数ヵ月後、手紙が届いた。
「新しい職場が見つかりました」と走り書きしたメモと、名刺が同封されていた。
調べてみればそれは有名なニューハーフバーの店名で、俺は頭を抱えた。
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