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近藤さんは黒い髪がお好きだもの、と総悟がいったことがあった。
ずっと昔だ。
たしかに当時、近藤さんが追っかけていたのは豊かな黒髪の目立つ女だったけれど、俺は聞こえなかったふりをした。
総悟を相手にそういう話をするのは、まだ早いと思ったからだ。
その頃の総悟は、よくできた砂糖細工のようで。
まだ声には幼さが残っていて、さすがに少女に間違われることはなくなったものの、むさ苦しい筋骨隆々の男どもと同じ性別に分類していいものかと、一種戸惑わせるような、そんな雰囲気があった。
なにもいわないでいる俺に、総悟は責めるような目で見上げてきた。
じいっと長い間見つめて、そしてはっきりした声でいった。「おれには良さがわかんねえ」
あれはどういう意味だったのか、と今になって知りたくなった。
年月の経過も、体の成長も、それぞれそこそこに、許される値に達したように思ったからだ。
総悟はあっさりしたもんだった。
「羨ましかったんでしょうね」
それだけなら、俺を充分に満足させる回答だったけれど、続きがあった。
「まともで誠実な人は土方さんを好いていた。なのに、俺のなりに惹かれて寄ってくる輩ときたらどっか螺子が飛んだ変態ばかりだったでしょう。不公平だって、やつあたりしてたのかも」
冷たい汗がどっと噴き出るのを感じた。
だらしなく寝巻きの前を開けたままの恰好で、俺はどうにもならず、総悟の聞き役に徹する。
「土方さんのこと見ても、なーんも感じない俺は欠陥あるんだろうなって思ってましたけど。もういいや。
俺に手ェ出した土方さん、おめでとうございやす。これであんたは晴れて変態の仲間入りでさァ」
にこにこと、総悟が笑う。
ふう、と一回深く息を吐き俺は、ぎこちなくならないよう細心の注意を払い、「光栄だよ」と笑い返した。