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火曜日

折り畳みで小話です。
そろそろじゃんぷを・・・ 「ぎーんさん、今晩の御夕飯なにがいいですか?」
「なんだなんだ?肉じゃがとカレー以外のもん作れるようになったってわけか?」
「もうっ。そんな意地悪言わないでくださいよっ」
「いーから座っとけ。仕事から帰ったら俺が作る」
「でも」
「でももストライキもねーよ。もう臨月なんだから今くらい貧乏ヒマなしの根性捨ててちょっとくらいゴロゴロしててもバチあたんねーんじゃねーの」
「銀さん」

そしていってきますのキス。とか。
ほんの一か月前まで、一部始終をこの電柱の陰から見守ってたんだって、懐かしく思い出す。
お腹に座布団入れて、貴方の子よって迫ろうとしたこともあった。
今思えば、留守にしてくれていてよかったなって思う。

銀さんがここの新居に越した時は、ようやく私の想いが届いたんだって思って、幸せで血管が切れそうだった。
いつものように、駅でコンビニで商談中のホテルのロビーで。
すれ違うこともせずひたすら隠れている私のこと、見つけて言葉をくれるのを待ったのに、銀さんは私のことまるで気付いていないみたいに扱った。でもそんなの想定内、クールなところが好き、っていうか冷たくあしらわれる私自身が好きだから全然よかったんだけど。
でも。
あのやぼったい眼鏡と暮らし始めたんだってわかってから、私、少し変わった。
今までは銀さんに舌打ちされようが無視されようがゴミみたいな目で見られようが構わなかった。楽しかった。なのに、ふとした時に、その息苦しいくらいの高揚感が掻き消されるようになった。

近所のスーパーに買い物に行って、特売品を両手いっぱい抱えて帰ってくる二人。
スクーターに二人乗りして出掛ける日曜日。
午前様で帰ってくる銀さんがドアホンを押すと出迎える家の明かり。

家の周辺を張るのがつまんなくなった。
それで、職場近辺の喫茶店で銀さんを待つことにした。それは楽しかった。つまんなく感じたのは気のせいだったんじゃないかって思うくらい楽しかったの。

そこであの子を見た。
銀さんの対面席に座る、お人形さんみたいな、茶色い髪の子。
恋してる目だった。少しでも話を長引かせたくってぎこちなく質問して、精一杯かわいく振る舞おうとするけなげな。

(ばかね、そのひと奥さんいるのよ)

知っていようがいまいが、選ばれないのよあなたなんて。いくら可愛くったって、媚売ったって、一生懸命だって無駄なの。
無駄なんだからね。

「・・・・・・。」

私、いつの間にか泣いてた。ぼろぼろ泣いてた。
ほんとはずっとわかってたの、ばかだって。
なんであんな女を選ぶのなんで私じゃないのいつか後悔するんだわって思いながら、でもきっと銀さんは私を好きになることはないんだってわかってたから、傷ついても平気なふりしてた。
好きだったのよ。
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