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日曜日

エレベーター内で遭遇した女子の会話が元ネタです。勝手にごめんなさいねお嬢ちゃん達。もえたよ・・・

折り畳みで小話です。
平日三時過ぎのファミレスは家族の愚痴を言い合う主婦と休憩中のサラリーマンでそこそこ盛況だった。
あいにく喫煙席しか空いていなかったがなんのその。待つのもばかばかしいし、いーよね?なんて後ろの子に形だけ断りをいれて、するっとボックスシートに腰を下ろす。

「今月ピンチなんだよなあと思ってるところに丁度よくカモ、じゃないお友達の沖田君の姿が目にとまったからさあ。あ、オネーサン!この冬季限定エクセレントチョコパフェ!それとコーヒーね」
「アイスティーひとつ。以上で」

出会いがしらに「奢って。」と語尾にハートマークをつけて首をかしげてみたら、「別にいいですよ」と素敵なお返事をいただいた。
積極的に関わり合いになりたくないという心とウラハラ、財布の薄さは俺の危機感や社会人としての常識を解き放つ。
それにホラ今日の沖田君は私服であろう袴姿だし、あのチンピラ上司が拳骨を振り回して連れ戻しにくるってこともなかろう。個人と個人の付き合いですと言い張ればなんのやましいこともない。
うんうん、と一人で頷いて、早速細長い容器をシルバートレイにのっけて運んできたウェイトレスにエエ顔をしてみせる。待ってた。

「いただきます!」

楕円形のココアビスケットをまずは容器の縁にのせ、その下に隠れていたミルクアイスとチョコレートアイスをすくう。おいしい。うまいじゃなくておいしい。底に沈んだチョコレートシロップとチョコプリン、ココアクランチの共演にも期待大だ。
と、頬を緩めている俺には目もくれず、対面に座っているスポンサーはテーブル上のリーフレットをじっと見つめている。
そこには、『ポイントを集めて温泉旅行へGO!』という文字が躍っている。

「行きたいの?旅行」

さして興味もなかったが奢って貰っているという立場上、精一杯の愛想をもって話しかける。
聞いてみたものの頭の中は「濃厚なアイスとナッツのアクセントがまた格別」なんてことでいっぱいだから話相手としては不誠実だという自覚はある。が、これは仕方ない仕方ないよ。

「俺、旅行ってあんま好きじゃねーです」
「よく行くの?さっすが高給取りは違うねえうらやましいこった」
「いやよくは行かねえです。ただこないだ連れてかれたんで」
「ああ、出張とか?」
「出張じゃねーですけど」

なんとなくの違和感につられておしゃべりと共に、ふ、と俺のスプーンも止まる。
この子がこんな歯に物がはさまったような言い方めずらしい。

「まず、旅行って朝早く起きて出掛けないといけないでしょう」
「まあそうかもね」
「あちこち観光名所見たりすんじゃないですか。そしたら夜、当然疲れて眠いですよねえ」
「まあねえ」
「えーと」
「?」
「で、朝は朝で、こっちは眠いし疲れてんのに、むこうはえらいテンション高いし」
「あ、テンション高いの」
「なんでそんな元気なんだよ、こっちは寝不足だっつーのにとか思ったりして」
「へえー……」
「いつも顔合わせてんのに、わざわざ出かける意味がわかんねーっていうか」
「沖田君」
「はい」
「ごちそうさま。ってことでいいのかな」

たぶん今いちばんふさわしい言葉だった。
なんだかだめ、これは詮索すると俺の危険が危ないともう一人の「かしこい銀さん」が警報を鳴らしている。オーケーわかった従おう。聞かなかったことにするが吉。
そんな俺の脳内寸劇など知る由もない沖田君は、こてんと首を横に倒して、ああだいじょうぶですよおごりますよ?とわけわからなそーな顔で言うだけだ。
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