土曜日 ちょっくら日本の中心にいってきます。 折り畳みで小話です。 ぱたん、ぱたんという音がして、いつの間にか目が覚めていた。 流しに落ちる水滴は、規則的に続いている。 首筋にひやりとした空気が触れて、思わず身を捩る。 (起こした?) はっとしてから、総悟の姿がないことを疑問に思って、それからひとりで納得した。 暑がりの俺と寒がりの総悟は半月くらい前ほどに、寝室を別にしたんだった。 寝起きのときなんかよく忘れている。 ぱたん。また聞こえる。 気付かなかったことにして、むりやり寝てしまおうかと布団を引っ張り上げるけれど、一度意識してしまったものを打ち消すことはむずかしい。 床に足を下ろすのに躊躇した。 身構えていようが怯えていようがやはり痺れるくらいに冷え切っていて、薄手のシャツとスウェットだけの恰好で休んでいたことになんだか溜息がでた。そしてその息は白く濁る。外は雪かもしれない。 手探りで進んでいる途中だった。 台所の明かりがついた。 「あれ、土方さん」 「……おう」 奇遇ですね、なんつって。総 悟は、パーカーの上に綿入れを着こみ、さらにフリース素材の上掛けをぐるぐる巻きにするという重装備で。できそこないの雪だるまみたいになっていた。 目を細めたのは、なにも蛍光灯が眩しかっただけじゃない。 「あ、蛇口?」 「そう」 それで通じた。確かにさっきの、水滴が弾ける音はもうしない。かわりに冷蔵庫が低く唸っている。 「寝るか?」 「そうですねェ」 「いや、こっちで一緒に。」 ねむそうな目が一瞬でぱちんと見開かれた。 「新婚みてえ」 「なんだそりゃ」 いつどこで俺とおまえは新婚だったのだ、とのんびりつっこむまでもなく、柄にもないよな可憐なようすで総悟は。 「だってもう俺に飽きたのかと」 「飽きるほどやってねえだろ」 「そういう意味じゃねーですよやだなァおっさんはー」 いひひ、なんてだらしなく笑って、むくむくに着込んだからだを寄せてきた。 「それではよろしくお願いします」なんて、そんな反応されると胸が痛む、というより悪さをしそうになるからよしてほしい。 PR