土曜日 昼寝とご飯とおやつで一日が終わった。おそろしい。明日も一日寝まくろうと思います。じゅ…じゅうじつしてるなあいまさらですがミッチー結婚したんですね。ほほう(それだけ)折り畳みで小話です。 せっかく楽しい気分になってたのに。「沖田は副長と仲いいから」きょうもだめだった。飲みの席で、楽しい気分のまま終わったことがない。きっと明日の朝も眉間に皺を寄せて凝り固まった顔で起きる、そう確信して沖田は憂鬱になる。「そうそう。沖田クンはー、特別ー」「副長さんのお気に入り~」むにーと頬を引っ張られる。逆からは別の人間の、火照った手がぺちぺちと伸びてきて額を叩く。「どこがですかィ」少しむっとした沖田は、たーんとコップを卓に置いて乱暴に、酔っ払いたちの手をのける。土方に怒鳴られない日はない。顔を合わせればそのたびにあれが悪いこれが違うと仕事のことから生活態度に至るまで文句をつけられる。土方の文句は多種多様に見せかけてつまり、もっと従順になれ という意味に集約される。場所を変えて言葉を変えて、繰り返し。沖田はというと、土方にいくらけんけん詰られようと殴られようと(そりゃあ痛くない程度にかわしているけれど)、その態度を改めたことなんてないし、改める気もない。できることなら土方のいうことなんてなにひとつ聞きたくないのだ。従順なんて言葉とはなるべく遠いところにいたい。酒を飲むなとか一歩さがって歩けとか居間で寝るなとか。土方のいうことはうざったいばかりで、いつでも沖田の耳を素通りしていく。仕事の命令なら別だ。だってその命令の根っこのとこには近藤がいる。沖田は近藤のためなら死んでもいいと、わりと本気で思っている。だからもし誰かに、「近藤の命を助けてあげるかわりに死になさいね」と言われたら、喜んで首を縦に振るだろう。夢のシチュエーションのひとつかもしれない。沖田が土方を嫌う理由もそこにある。土方はなにかと近藤にくっついて回っているし、沖田にとってこれまた腹立たしいことだが、近藤自身も大いに信頼を寄せている。頼り切っているとすら思う。土方もそれを自分でわかっているから、大きな顔をしているわけだ。(あいつもあのシチュエーションを狙っているに違いない)沖田の人生の目標ともいえるそれを阻むもの。ならば、土方は敵以外の何者でもなかった。犠牲はやむなししかし最小限に、できれば土方だけに災いを。ほかの人間は巻き込まない。(そして器物損壊は仕方ないってことにしよう。)そんなふうに、「いかにもなーにも考えてなさそなアタマだ」とまわりの大人によっく掻きまわされては髪の毛をあほにされている沖田にも、一応の線引きはあるのだ。黙りこんでいると、「まあまあ機嫌直して」と新しくあけた酒瓶をかたむけられた。コップから零れた分が手首をつたう。もうすっかり温くなっていた。一気に呷ると喉がきゅうっと甘く焼けた。「納得いかねんでさァ!」なんだ酔ったのかーとけらけら笑う声がする。「酔ってやせん」と答えるとそうかそうかわかったわかったとうれしそうに頷かれる。わかったならいいか、と沖田は少し重くなった頭をぐるぐる回してから続けた。「俺はねェ、土方の野郎のことを心底嫌ってるし、顔みんのもいやなら口きくんのもいやー、ってなもんで、むこうもそうなんですぜ?見解があ、一致してんですぜ?なんでそゆこと言うんですかィ」「隊長飲みすぎ。じゅうぶん酔ってるぞ」「酔ってねえ!もおお、とにかく、土方とは馴れ合わねーの俺は!やるかやられるかのサツバツとした感じなの!仲いいとか身の毛がよだつこと言うやつァぼこぼこにすんぞコノヤロー」「でも当の副長が、実際沖田さんには甘いからなー」「ああ!?」睨みつけると視界が揺れた。沖田はだいぶ酔いが回って眠くなっていたけれど、頭は冴えていた(と本人は思っていた)ために、この機会を逃してはならないと妙に勢いづいてしまったのだった。「……じゃあ直接言ってくる。」「え」「え」「ええー」気持ちのうえではずんずんとまっすぐに、実際は千鳥足でふらふらと。沖田は土方と近藤が卓を並べて飲んでいる一角になんとか辿りつくと、きちんと膝を揃えて座って、いざ、とばかりに口を開いた。「近藤さん。俺はただ、近藤さんに幸せになってほしいだけなんでさァ」「おー?なんかわからんがありがとう!この唐揚げ食ったか?旨いぞ」「近藤さん食い掛け渡すなよ…ほら総悟こっち食え」「真面目な話なんでさァちょっと黙って聞きなせえェ」沖田はくわっと一喝した。「近藤さんのこと、俺が金持ちになって蔵たてて幸せにする、とかはちょっと無理て思ったから、せめて不幸になんないようにがんばって、体張ってがんばって、がんばりたいだけなのに……なんで土方さんは邪魔すんですかィ」「いや、邪魔してねーし」「総悟そこまで俺のことを……!!」「そうでさァ近藤さんわかりやすか、これが俺の愛。土方さんはアレだアレもうほんとむかつくんで今後俺に構うの一切やめてくだせェ副長のお気に入りーとかいわれて迷惑なんで。」ここまで一気にまくしたてると、電池が切れたかのように、かくんと沖田は頭を垂れた。そのままこてんと畳に転がると、すうすう寝息をたてはじめた。「あーあー総悟寝ちゃったねえ」「いつものパターンだな。近藤さん、こいつ部屋運んでくるわ」「頼むね。それじゃそろそろお開きにするか」土方の肩にかつがれた沖田を指さして、「隊長沈没」「定例行事」とあちこちから声があがった。「飲ませ過ぎんなんっつったろ」土方も口ではそういいながら、こういう席での沖田の飲酒を力づくで止めたりはしない。なんせ大勢でこうして飲むのなんて、年に数回のものだから。普段はやかましく酒を禁止している分好きなだけ。「はーいそれじゃあ皆さん宴もたけなわではありますが……」土方は近藤の声を聞きながら、酒の匂いが充満した居間を後にする。こうして毎度毎度、土方に抱えられて退場してるだなんて、沖田は知らない。たぶん知らなくていいこともある。苦悶の表情を浮かべながら運ばれている沖田のことを、土方がいつもこのあとどうしているか、とか。そういうことも含めて、今は。 PR