日曜日
「卑怯だ」
思った通り、律儀な土方さんの横顔がこっちの方を向いた。
「人の顔見ながらなにしみじみ失礼なことゆってんだよ」
「中年がゆってるとかゆってもかわいくないですぜ・・・・・・」
「ほっとけ」
また、よその方を向こうとしたから這いよって、腰に腕を回した。こうすると、 寝心地はいまいちなものの、土方さんの腿が枕になってらくちんだし、なによりぬくい。
「したいのか?」上から振ってきた問いには誠意をもって意思表示する。「いいえ」
「じゃあなにしてんの」
「ええと、生き血を少々」
「噛んでもいないのに?」
「お望みなら歯を立てますが」
「やめろばか」
ぺし、としつけるように額を叩いて、それからゆっくり、骨ばった指は髪を梳いていく。
つむじからうなじに、すべらすように。まずいことに俺はこれに弱い。
罠だ。そう思ったけれどしかけたのは俺だった。
自分でも気付いていない、してほしいことを簡単に見抜いて実行してしまうんだから土方さんはずるい。
「卑怯者」
「はいはい」
「こうやって俺の殺意を中和しようとしたってそうはいかねえ」
土方さんが声を立てずに笑ったのが、腕に伝わった。
ぜったい顔なんて見ない。
いま見たら死ぬ気がする。
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