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木曜日

世間の皆さま働いてますか私はゆうきゅうとってました!!自慢する時は元気よく!!
明日はまだいいとして、来週からのフル出勤に耐えられる気がしない・・・長いだろ。五日間出勤って。こういうときシフト制が羨ましくなるものの以前シフト制の仕事だった時は土日の連休すら希少で世間が妬ましい、と思ってたような。いつだってとなりの芝生はグリーンだよ


折り畳みで小話です。



近藤の店にこのごろよく顔を出すその子は、だぶついたカーキ色のパーカーがトレードマークだ。

「ちくわとさつまあげとはんぺん下せェ、2こずつ」
「おうよっ」
「あ、あとがんもどきも」
「ほいきた、それも2つでいいかいお嬢ちゃん?」
「・・・へい」
「えーと、お代500円ちょうだいします」

会計をするときは、長い袖からちょっと出た指先で握りしめている花柄のがまぐちから、100円玉をつまみだす。たぶん500円玉貯金をしているんだろう、と近藤は踏んでいる。覚えがあるからだ。学生のときは、年に何回か挑戦しては挫けたものだった。

「・・・あの、足りなくねえですかィ」
「端数はおまけしとくよ。なんせお得意様だからなあ」
「でも、こないだもおまけして貰いやしたし」
「なーに、気にしないでくれよ。どうせもう閉店間際だし、オジサン若くてかわいい子には甘いんだ」
「・・・はあ」
「いやセクハラじゃなくね!あっとそうだ煮崩れてんのでよければ、大根つけるんだけどもってってくんないか?」

ぶんぶんと首を振るけれど、このお得意様の顔が一瞬輝いたのを見逃しはしなかった。
ささっと菜箸とお玉で掬い上げると、持ち帰り用のタッパーに何品か押し込める。

「ありがとうごぜぇやす」
「ごひいきに!またよろしくおねがいしまーす!」

ぴしゃんと閉まった引き戸を見届けて、ふと時計に目をやるとちょうど長針がてっぺんを指していた。
首だけ出して外を窺うと既に人影はなく、電柱の街灯が瞬きするのが見えた。
今度こそ引き戸を開け放し外に出て、一度思い切り伸びをする。
のれんを「惣菜処いさお」から「飲み処いさお」に掛け替えて、もう一働きだと自分の頬をぱんと叩いて気合いを入れた。

店に再び足を踏み入れると、陰気な表情で頬杖をつく男がひとり、たそがれている。
坂田銀時。彼もまた近藤の店の常連である。
土地転がしから保険の取次、ネイルサロン経営から麩菓子の買い付けまで、あらゆる業界を渡り歩いているとのうわさから、屋号は「万事屋」。誰がつけたわけでもなく、自称である。
熱帯魚好きが高じて会社のワンフロアに水槽をこしらえてしまったほどの好事家であるらしい。世間の尺度に照らして見れば、成功者だと言えるはずなのに、それをひけらかさないところと、「舌が肥えてるんだよ」といいつつ、餡子をつまみに発泡酒でもにこにこしている気楽さが、近藤と彼の友情を細々と続かせている。

「おいおい近藤よ」
「なんだ万事屋いたの」
「いたよ。いただろ。タクワンとお茶あてがえて一時間も放置しやがってお前は。俺にはサービスしてくんないの?ちくわぶの一個もおまけしてくれたことないじゃん」
「だってお前儲けてるしな。俺はとれるところからはきっちり貰う」

椅子を前後にがたがた揺らして、万事屋は口をとがらせる。
「大将のけちー」近藤は苦笑しながら、手元で包んでいた折詰をカウンターにのせた。

「はい、お待たせご注文の巻き寿司」
「おー。これヨメが好きなんだよねえサンキュ。お代は?」
「三千万とんで一千円」
「おまけは?」
「お前んとこが倒産して路頭に迷ったらそのときはいくらでもおまけしてやるぞ」
「縁起でもないこと言わないでくれない?うちには食べざかりの家族と犬がいるんですう」

きっちり料金分千円札を一枚近藤に押し付けて、万事屋はにいっと笑った。
そして、よっこいしょ、とじじむさく席を立ちながら、思い出したように口を開く。「そういえば」

「さっきの子の名前、なんていうの?このへんの子?」
「さっきの?俺がおまけしたお嬢ちゃんか?いや、よく知らん」
「そっか」

何か続けようとしたその時、「もうやってる?」とのれんのむこうで声がした。人影が見える。
「じゃあまた」とちょっと早い酒飲み達と擦れ違って、万事屋は店を出て行った。

それきり、しばらく姿を見せなかった。
万事屋も、花柄のがまぐちのお嬢ちゃんも。
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