月曜日 五月は土方さんと姉ちゃんの誕生日があって、七月になるまでは歳の差がさらに開いたままってのがなんともかわいらしい葛藤がありそうでよいですね。達観には程遠い沖田の青臭さが好きです。色々な局面を乗り越えて表面上はすっかり落ち付いたように見える今、「もう俺はちゃんと大人だし、今度こそ間違ったことなんてしないし正しいことだけやれるんだもん」なんて信じちゃってるかもしれないけどその愚かで幼い自意識を、いついかなる方法でがつんと攻撃することができるだろうかと思いを馳せるだけでご飯おかわり。三杯目は黙って茶碗を出す。YES勢いNO脈絡!今日も元気に折り畳みで小話です。初期沖。 掌の上に乗せられた水色の小瓶。「ありがとうごぜーやす近藤さん」「いいっていいって。試供品だしそんな畏まんなや」「大事にしやす。こういうの使うの初めてなんでさァ」「あ、そうなの?これはな、体温高いとこにちょっとだけつけてな…」「高いとこ?」「そう。たとえば耳の、」近藤さんの手が、ひとつに束ねた長い髪をくぐってその耳の下に辿り着く前に、俺はしゃきしゃきと足を進めて二人の間に割り込んだ。「…おう近藤さん探したぜ」「ん?なんだトシ怖い顔してなにかあったのか」たぶんうっとりしていた沖田の肩が、かくんと落ちた。後ろ姿からびしびしと伝わってくる、俺への怨念。ざまあみろ。俺は内心ガッツポーズをしつつそう思う。「“愛しの”お妙さんがシフト変更とかで、今日は5時からの出勤らしい。監察からの情報だ間違いねえ」「それは大事件だ」「急いだ方がいいぜ」「ありがとな、親友!」「よせよ」監察もかわいそうに。俺のわざとらしいくらいの笑顔になんの疑問も抱かずに、近藤さんは駆けだした。擦れ違いざまにハイタッチまでかまして。沖田は近藤さんを見送ることもせず、さっさと逆の方向に歩きだす。とっくに慣れっこなんだ。こういう展開に。「ざーんねんだったな」「…」「おい無視すんじゃねーよ沖田」「うっさい」全力疾走じゃなくてよかった。こいつの俊足はばかにできない。大股で先に回り込んで、唖然としているこいつの膨らんでいる方の拳から、さっき手渡されたばかりの小瓶を取り上げた。「いいもん持ってんじゃん。俺もこれ持ってる」「…え。」「お前もこれつけんの?じゃあ、」俺とお揃いだな。そう言ってやれば案の定だった。「死んでもごめんでさァ」吐き捨てるように叫んで、沖田は俺の手からそれを奪い返すと、今度こそ全速力でどっかに消えてしまった。せっかくの近藤さんからの貰い物だっていうのにこれで、沖田はあの香水の瓶の蓋を開けることはないだろう。『俺と同じにおい』だなんていう最大のケチがついたわけだし。「…うん」泣きそうだ。俺は、ポケットの中のリボンのついた包みを指先で探る。甘く柔らかな香りで、店頭で配ってた試供品なんかじゃなく、ガラスケースの中に飾られていた上等なやつなのに。そういうことじゃない。きっと沖田にとっちゃ、試供品だろうがガムの包み紙だろうが、近藤さんという付加価値だけで充分なのだ。そう思えば、それに勝っちゃう俺の嫌われっぷりってある意味偉大じゃないか?とりあえずは、さっきの嘘を事実にするべく試供品を貰って来よう。 PR