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木曜日

新年早々有給休暇たあいい御身分ですね、いいじゃん別に!ほっとけよ・・・という脳内劇場を繰り広げつつ、おやすみです。これが漫画脳ってやつだなあぶねー

所用を片付けに行く前に小話を。去年の秋ごろ?「こういうのモエるよねー」て話して放置してあったものの解凍です。折り畳みで。


土方さんはいっつも、女をとっかえひっかえ。
あれはもててるっていうの、もてあそばれてるんじゃねえの?って丁度隣にいた奴に尋ねたら、
「もててるんですよ。だってほら、今の女性なんて、いかにもめろめろじゃないですか」
なるほどなあ。土方さんはめろめろって感じではないな。
つまり、土方さんの方がめろめろに溺れてるんなら、「もてあそばれてる」ということ?
「ううん・・・一概には言えませんね。だって相手も夢中なら、それは相思相愛ってことになりますし」
へえそうか、と生返事をしながら俺は、手近にいたとは言え、山崎に聞いたのはもしかしたら間違いだったのかも、と思っていた。
だって当の山崎が、『土方さん』と名前を呼ぶ時、めろめろとまではいかないけれど、めろ、くらいのとろけた響きがあるってことに、薄薄気付いていたからだ。
俺の勘はなかなかに鋭いのだ。


「お前は鈍すぎる」
ふるぼけた天井を背景にした土方さんに否定的な発言をされながら、俺は仰向けに固定されている。
両腕を土方さんの両腕で押さえつけられて、自由が利かない。標本のバッタの気持ち、をしばし考えてやめた。残念ながら昆虫に感情移入できるほど、俺の経験は豊かではなかった。わかんねえよ、だって人間だもの。
しかたないから人間らしく。
「にぶすぎる?どこが?」
訊ねてみる。
「土方さんも人間ならば、まずは会話から始めてみてはどう」
「・・・悪い」
効いたらしい。拘束がゆるくなったのを察知して、俺はさっと体を翻し・・・たところであえなく捕まった。今度は背中に腕まで回して、がんじがらめだ。うええ。
「ほんとに気付いてないのか」
「主語とか目的語とかが抜けてんじゃねえですか」
「ニュアンスを読み取れ」
「俺は勘は悪くねえと思うんですが、あんたに対してはアンテナが立ってねえみたいなんでさァ。圏外ってやつ、」
そこまで説明したところで、背中にあった手がさわさわと動き始めたので、ざっと血の気が引いた。やばいやばいやばい。あれに似ている。殺気?戦闘態勢に入れ、とアタマに命令される瞬間に。
「・・・冗談やめてくだせェ。殺しやすよ」
俺は理性を総動員して、言葉を絞り出す。吐きそうだった。緊張と、認めたくないけれどこれはきっと、恐怖だ。気を抜くと奥歯が鳴りそうで、それをこらえるためにゆっくりと、呼吸を深くするよう意識する。
「冗談なんかじゃない」
ここから土方さんの独壇場、独演会、独白がはじまった。
ずっとこうしたかった。でもまさか言い出せるわけもなくて悩んでいた。隠していた。隠しきれなくなった。どうしようもなくなってしまいにはよく似た女を見かけては、
「手当たりしだいに寝たわけだ」
言い淀んでいた部分を勘の悪い俺に代弁されて、土方さんはちょっと苦い顔になる。
「そうなんでしょ?」
「そうだよ」
「そんなんで寝れるの?虚しくなんねえ?」
うっかり口に出してから、まるで責めてるみたいに聞こえる台詞だなあと反省した。きっとこれは、踏み込むとよろしくないことになりうる領域。
「虚しくなって、やっぱお前じゃないとだめだって気づいたんだよ」
ほらみろ。
『沖田さんは敵のクビを取るためなら火事場でもなんでも突っ込んで行っちゃいますからねえいつか怪我しますよ』いつかの山崎のお説教を思い出して、なかなか的を得ている、と今更ながら感心する。俺は防御に対する意識がきっと低い。
今だってそうだ。攻め込むつもりでぶつかっておいて、痛いとこを攻撃されたのは結局俺の方。
恐怖はいつのまにか消えていた。
思いもよらず声が震えたのは、残っていた緊張のせいだった。
「あのさ」
「ん」
「それって全然誠実ではないし、実際のところ『俺』を口実にして、いろんな女をつまみ食いしたかっただけなんじゃねえの?」
さあ反論してみろよ。
俺が売った喧嘩はあわれ、土方さんに見向きもされなかった。みっともなく言い訳をして、俺に徹底的に軽蔑されるのが土方さんの役目なんですよ、と教えてあげる必要があるのだろうか。それくらいのニュアンスは読み取れって思うけど。
早い鼓動なんて聞きたくない。
土方さんの表情なんてもう見たくない。だから、首に手を回して引き寄せた。
「そうご」
おそろしき見解の相違、明らかに今土方さんは、今までと違う意味合いを込めて、俺の名前を呼んだ。
なんていうんだっけこういうの。
めろめろ?

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