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土曜日

午前中に日記書いたと思いこんでいました。
折り畳みで小話です。昼ドラ風味黒山崎。私の中で嵐の如く大ブーム。
沖田さんはこのごろ夜をとても嫌う。
とは言え彼にとってのおそろしい夜は、明け方までは続かない。せいぜい丑三つ時に終わりを迎える。

終わらせるのは副長の足音だ。

猫のようにそっと、裏口から中庭を通って、自分の部屋へと急ぐ足音。
一連のそれが過ぎ去るまでのわずかな時間を、じっと息を殺して耳を澄ましてからだをかたく縮めて、待っている。耐えている。
俺は頬づえをついてそんな沖田さんの強張った白い肩の線を、黙って見ている。いつだって。

「・・・今回の相手には、かなりご執心みたいですから」
「どうせすぐまた飽きんだろうよ」
「沖田さんはご存知ないんで?局長には今度ご紹介するつもりだとおっしゃってましたが」
「そう、なのか」
「あれなら近いうち一緒になるんじゃないですか・・・ああ、これは私見です、すいません余計なことを」
「山崎はどんな女か知ってんの」
「興味ありますか?・・・ああでも。どうせなら副長に直接訊ねた方がいいですよ。副長も言いたくってうずうずしてるかもしれませんし、きっと喜びますよ沖田さんが気にかけてるってわかったら」
「気にかけてなんかない」と否定するのも忘れて沖田さんは、ひたすらまばたきを繰り返す。あかりを落とした部屋の中で、なだらかな輪郭と、潤んだめだまがちかちかと気紛れに光るのを見た。満月じゃないのが悔やまれる。
「複雑でしょうけど、沖田さんもどうか、副長の幸せを願ってあげてください。」
「・・・・・・」
「沖田さん?」
「しらなかった」

重くのしかかった悲しみに潰されたように、沖田さんは枕から頭をずり落として、さらに体を丸めてしまった。
震えている。もしかしたら、涙でも流しているのかもしれない。
しらなかった?そうでしょうねあなたは、毎晩ここで、自分の部屋で副長の恋が終わることだけ願っていたんだから。
事実に触れたくなくて、現実を見たくなくて、副長が裏からこの部屋に歩みの先を変えて立ち寄ってくれるんじゃないかって不毛な期待を抱いているだけの、怠け者な敗者。
灯る。
喉元に迫り上げてきたのは、長く燻っていた感情だった。

「そんなだから、」

そんなだから副長は
あなたのものにならないんですよ。

俺の放った言葉の毒が、ゆっくりと沖田さんのこころに渡っていくのを感じた。
確信する。彼の中にある柔らかい部分を蝕んで、傷つけた。
そして思い描いた安っぽい想像そのままに沖田さんの両腕は俺の首に伸ばされる。俺は、痺れるほど甘やかな優越感とともに、それを受け入れた。
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