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水曜日

半年くらい前に二人くらいに「四コマ漫画サイトつくる」って宣言したのは嘘でもはったりでもなかったんです。ただいろいろ伴わなかっただけで。嘘じゃないいわば誤差ってやつです。
折り畳みで小話を。

せっかくお招きしたお客様は、三日前から何も口にしていない。
きっとこの寝床の設えがお気に召さないのだ。

湿った壁に囲まれて、唯一見える「外」の景色は縞模様。
鉄の柵に閉じ込められた珍獣は、今夜も呼吸と瞬きをするだけで、何を尋ねても答えない。
少し長く目を閉じているときは、決まって固く、両手を合わせて組んでいる。
もしかしたら故郷を想っているのかもしれない。

「水くらいなら、いいだろ。飲めよ」

死にたくなかったら、と付け加えたのはまずかっただろうかと、土方は小さく後悔をしたのだけれど、ほんの一言も、一瞬も、コミニュケーションが取れていないという現状を思い出して、ほっとするのと同時に、苦い気持ちにもなった。

土方の役目は、この檻の鍵を守ること。
檻の中の住人にとって、いい印象などあるはずもない。
それは常々承知しているつもりではあるのだけれど、今回ばかりは、彼なりの「正義」を基準としたなら、判断の秤は大きく、この囚われの異邦人に傾くだろうと思っている。

国境警備兵のパトロールに引っ掛かった際、派手に暴れたのが、こんな景観よろしくない環境に放り込まれた理由と聞いている。
もっとも、負傷者はすべて軽傷であるため、祖国と連絡が取れ次第保釈する予定だ、とも。
真偽の程はわからないけれど。

なんせ頭髪の色、眼球の色が珍しいってので尋問されたのがそもそもの発端だ。保釈されたとして、ここを出た途端どっかの愛好家に浚われるってことも、大いにありうる。
残念なことにここはそういう土地だ。

「・・・お前も災難だよなあ」
「そう思うんならとっとと出してくれやせんか」
「・・・・・・え?」
「あんた、俺の言葉がわかるんでしょ?もしかして俺とおんなじ国のひと?」

急にきらきらと期待を込めた瞳で見つめられたものの土方は、黒髪黒眼、三代前に遡ってもこの国の生まれだったので、「いいや」とだけ伝えた。

「なんだ・・・じゃあなんで、言ってることが通じるのかなァ」
「俺が聞きたい」
「まあ、なんでもいいや。脱獄するから手伝ってくだせェ」
「自己紹介が遅れたが、俺は土方。・・・ここの看守をしている者だ」
「ふうん?なんです突然・・・俺は総悟ってんでさァ」
「そうか、総悟。お前、「看守」ってなにかわかるか?見張り、番人。困ったことに、お前を逃がさないようにするのが仕事なんだ」
「でもあんたは、俺に同情的でしょう。しかもベッドから降りる時の足が決まっているタイプ」
「まあな」
「じゃあ適任だ。今俺を逃がしてくれたらもれなく、俺もアンタを逃がしてあげますぜ」

こっから。

何を言っているんだ、と呆れたためいきを落とすはずだった土方の口もとが、笑みの形に変えられた。
人生は一度きり。
なんて、破滅的な格言を思い出す土方の指先で、鍵が揺れた。
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