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火曜日

チナさんにR女史の歌がいかに素晴らしかったか自慢しようとしたら「聞きたくない」って断られました。かなり辛辣に。もうこの人の名前は「辛辣チナ」って登録しようと思う。
この冬ますます寒くなりそうです。

折り畳みで小話を。
空気読まずに銀+沖(女子)→土。
鏡の中で会話をする。

「こんくらい?」
「もっと」
「肩のちょっと上?」
「もっと。首がすーすーするくらい」
「潔いね」
さっきまで瞬きだけを繰りかえしていた無感動な少女がようやく、「笑う」ってことを思い出したかのように、肩を揺らした。危ない。こっちは刃物を持っているんだ。
耳のうえあたりを両手のすべての指を使って、押さえこむ。
顔を正面に固定すると、首から下がケープで覆われているのも相まって、まるで練習用のマネキンみたい。色が白いのは元々だけど、今日はどうにも表情が固いから余計に、そう見えるのかも。
「潔くは、ないです」
「だってずっと伸ばしてたでしょ。きっれーなストレート。手入れの仕方もちゃんと実行してたじゃない?面倒くさいって言ってたけど、マメに。成果出てたよ。それを未練もなしにまた、随分ばっさりいくから。」
「未練があるからばっさりいくんです」
「ふうん」
鋏を入れる。しゃりん、涼しげな音と一緒に髪の束が床に落ちていく。
濡れて少しくすんでいても、この子の髪は明るい、いい色だって思う。
おしゃべりが嫌いな客と、話好きな客。
この子は後者。雑誌を広げるのもそこそこに、いつもたわいない、学校での出来事を話してくれる。
その出来事の中の最多登場人物某クンについて、今日は一秒たりとも時間を割かないあたりが、この事態の原因だと睨んでいるわけだが、どうだろう。たぶん合ってるんじゃない?
俺の足元に、枯れ葉色が敷き詰められる。
鏡の中のお嬢さんは、自分のからだの一部だったものがはらはらと落ちていくのをじいっと見送っていたかと思うと、ふいに口を開いた。
「好きな人のために髪を伸ばすって、ばかみたいだって思う。」
「そうかな。俺はかわいいと思うけど」
「ばかみたいだよ」
「ばかじゃないって。素晴らしいことだよ。俺はすべての女の子が男のために髪型を選ぶべきだ、とすら思っているんだから」
「それって本気?」
「半分ね」
「適当だなァ」
「だって考えてごらん。誰かのためにロングヘアにする女の子もいれば、ショートカットの女の子に恋に落ちる男だっている。そう考えれば恋の成就ってのはどちらにとっても50・50なんだ」
「・・・美容師の鏡、ってよりもやり手の詐欺師ってのがしっくりくるかも」
「そりゃないんじゃないのお客様ー」
ようやくいつもの悪戯っぽい目に戻った。
短く揃えた毛先がほんのり色づいた頬を掠る。よしよし、似合ってる。
「完璧だ。これで落ちない男はいないね」
うまくいきますように。
そう願ったのが聞こえたかのようなタイミングで、鏡の中の『絶世の美女』が不敵に微笑んだ。
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