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木曜日

青森ってば雪積ってるそうですよさむさむ。トーキョーはまだ秋って感じなのに。日本縦長。
折り畳みで小話でも。


引き出しの中はがらんとしてほとんど空だった。
「あ、」
奥まで手を突っ込んでなにか触ったと期待したのに、くしゃくしゃに丸まった始末書の書き損じが転がり出てきただけで、思わず頭をがりがりと引っ掻いた。
アルバムどころか私物らしいもののひとつも出てこない。
そもそも自分自身の写真を額に入れて飾っておくようなのは、一種特殊な性癖だろう。あいつとて随分ひねくれた性根を持っていたけれど、こればかりは該当しない。
すこし考えれば判りそうなものだったのに、つい五分前の俺は頑なに、ここにこそ探し物があるはずだと信じていたんだ。

『できたら、ちゃんと笑っている顔のがいいな。』
無茶を言うな。
あいつがはしゃいでカメラの前に躍り出るようなキャラかっての。そうでなくても、腹黒で人を小馬鹿にしたようなにやにや笑いばっかしてたじゃねえか。
近藤さんは、身分証の写真はかしこまっていて「総悟らしくない」と言うけれど、充分だろう。大人ぶった顔をして、制服に着られてぎこちなく前を見据えている様子なんて、笑ってしまう。

捨てようとした始末書の失敗作を広げてみると、俺の筆跡で『真面目に書け』と走り書きがあった。
古い煙草の匂いが立ち上って、すぐ消えた。

あいつは。
どんな顔で我儘を言っていたのか、思い浮かべることがもう、難しい。



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