土曜日 週刊土沖を経て習慣土沖か・・・←偉人の名言を拝借 折り畳みで小話です。女子沖注意。 我が校のピンドンと名高い何某が俺のクラスを訪ねてきたのは、授業開始があと十分後に迫った、弁当と暖房の匂いがもよもよと渦巻く平和な午後のこと。 タイルを擦る甲高い足音が近くで止まったのに気付いて俺が顔を上げると、紺色のカーディガンが腕を組んでいた。 どよめく教室。 なんせここは三年のクラスだ。頼まれごとがあってー、と入口で取次をしてもらってから、おずおず入室するでもなく、何の迷いもなく突入する一年なんて、珍しい。 移動教室のときに見かけるような、今にも倒れてしまいそうなか細げですらある、普段の印象とは違っていた。 それこそ、牛でも殺せそうな。 そんな目で人から睨まれたのなんて、小学校のとき以来かもしれない。 「・・・なにか用か」 礼儀のような気がしたので尋ねると、目の前の端正な顔に緊張が走った。 「ちょっとツラ貸しな」 第一声がそれか。 仁王立ちでガンを飛ばす姿の背後に、架空のチーマーが見え隠れする。 「・・・どこにだよ」 「それは言えない」 「もうそろそろ授業始まるんだけど」 「いいから」 「よくねえよ」 「どうせここで日向ぼっこしてるだけなんでしょ。さっさと腰上げてもらえませんか」 「昼休みくらいどう使おうと俺の勝手だろ・・・だいたいお前、誰」 初対面の、しかも年上相手にナニサマなんだ。 実のところこいつの名前なんて、聞くまでもなく知っていたのだけれど、むかついて仕方がなかった俺はわざとそういう言い方をした。 不愉快な奴。 遠目には儚げな印象すらあったこいつに、心の中で一枚、ラベルを貼った。 今後一切、思い違いをしないようにという決意を秘めつつ。 「とにかく、用事があるならここで済ませて。たいした用事じゃないならさっさと戻りな」 「沖田。」 「は?」 「なまえ!沖田っていいいます。そうだ、言ってなかった」 「ああ・・・そう。」 「土方センパイのことが好きです。カノジョにしてください」 「え」 「だめですか」 いまや教室の中すべての聴覚を支配していると言っても過言ではなかった。 イエスかノーか。 土方さんってモテそうだよねーわたし立候補していい?と言いつつ次の日には野球部のキャプテンと付き合い始めた女子マネへの淡い恋。の古い記憶と戦いながら、俺は紺色の袖のほつれを、三十秒ほど見つめていた。 PR