木曜日 午前二時に書きかけが全消えした気持ちなんて言葉にできない。 折り畳みで小話です。 俺はこの頭の育ちがよくないとは言え満十八と、チヨコレイトパイナツプルと拍子をつけながら段差を詰めて行く遊びをしているわけでもなかったので、いつもより高い位置にあるその襟ぐりをぐいっと引っ張って、呼び止めた。 「総悟」 勘がよく、反射神経も優。 山の動物のようにと言うよりは都会の爬虫類のように、総悟は一瞬だけバランスを失った体をそれは見事に持ち直し、ひらりと二段下にある俺と同じ高さの地面に降り立った。 「あっぶねェの。転落死させる気ですかィ」 「そこまで鈍くせえ部下を持った覚えはねえ」 「おやまあ。そりゃあお互い様ってやつですね」 どうせ俺が上司なんて認めない今すぐ死ねと、そのからかうような声色が俺に告げるだけだってわかるから、ここで会話を切り上げる。 「俺は本気だ」 「・・・・・・今までのことはなかったことにしろって、そういうこと?」 「そうは言ってねえよ。忘れる必要はねえ」 「ふざけんな。アンタが捨てちまって二度と口になんて出さないことを、俺だけ後生大事に持ってけっての?」 殺して欲しい。 そう呟いた横顔が奇跡みたいにきれいで、勿体なかった。 PR