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おみやげだっつって渡された布がなんなのかわかんなくって、結局やかんの鍋敷きにしちゃってんだ。
土方さんの「あ」と言うのは不満の声だった、確信する。
どこに行ってたのかなんて知らない。
海の向こうなのか、あるいは600キロメートル圏内のこの陸地のどこかなのかすらはっきりしないのだけれど、一週間土方さんが不在だったということは事実なのだ。
持参した急須で持参した紅茶をふたり分淹れる土方さんは、ゆげの向こうで一週間前と変わらない、長い前髪の間からかったるそうな瞬きをしている。
「いい子にしてたか」
「そりゃあアンタがいませんでしたから」
「なに、さみしかったの」
「勿論そういう意味じゃありやせん」
「わかってて聞いてんだよ」
「聞いてて虚しくなりやせんか」
俺は言ってて虚しくなるよ。
だって朝目が覚めたら姿がなくって、その代わりとでもいうように、テーブルの上に「生活費」って書いた茶封筒が置いてあったんだ。
封筒の裏には『ちょっと出てくる。冷蔵庫とフリーザーに飯アリ。心配すんな。土方』って。
生活費とかバカにすんな、家計簿つけてんのはアンタかもしんねーけど俺だってバイトくらいしてるし、飯くらい一人でなんとかするし、抜いたって平気だし、なにより家出は俺の専売特許なのに!
「お前がさ」
「なに」
「いっつもふらっと居なくなるから、真似してみた」
「・・・人のせいにしねーでくだせぇ」
「お前のせいだよ」
「喧嘩売ってんの」
「なんか駄目だな。一緒に居すぎると」
これは。
なんだ。
ええと。
「お前の顔が見たくって仕方なくなった」
「・・・・・・」
こっそり喉元に上がってきた苦い泣きッ気を慌てて飲み込んだ。
すんでのところで18歳黒歴史の1ページを綴ることは免れたみたい。
「・・・・・・ええと、なに?」
「ひとりで部屋で待ってんのも、お前ひとり残して俺が離れてるのも、同じくらいさみしい」
「土方さんは幾つになったんですか」
「ひとり寝が出来ない程度には、ガキかもな」
やたら熱烈なんだけどさては、南国のほうにでも遠征してたんだろうか。
おかげで紅茶に砂糖を入れるのを忘れてしまった。
「次はいっしょに連れてくから」
「いらねえ」
とりあえず、しばらくは。
この8畳の楽園で苦いばかりのお茶を飲みましょうか。