てなわけで ぎんおきです。 有言実行です。 「今日は早く帰んなきゃ」 「まだ四時でしょう」 「ん」 「用事でもあるんで?」 「誕生日なんだわ」 「誰の」 「俺の。」その三文字を聞いて、次に出てきた言葉が「そりゃ大変ですね」だったのは、それなりに動揺していたってことなのかもしれない。(だって何が一体、大変なのやら。) 一人になった部屋で、携帯電話に目を落とす。 十月十日。ぞろめ。覚えやすい。土方さんの倍。でも俺忘れっぽいからなァ、来年になっても覚えてっかな・・・ というより。 「来年は、祝わせてくれんのかな」 祈るというよりも、途方もない無謀さを自覚するために、唇に乗せた。 頭の悪い思考にめまいがした。よかったまだ、判断力は残っている。 あるわけがない。ばかばかしい。 旦那との関係は、時間が経つにつれてどんどん偽物くさくなっていく。 変わった避妊具だとか、夜中のドライブだとか、お別れのキスだとか、そういう小物ばかりが増えていくのに、いつだって肝心なところには踏み込ませてくれない。自分のことを、ちっとも話してくれない。はぐらかす。 たぶん今日顔を合わせたときに誕生日だと知っていたら、ちょっと豪華な食事をおごったし、たぶん至れり尽くせりのサービスをして、そして出来る限りの笑顔で「おめでとう」と言っただろう。気が利かない、朴念仁だという自覚があるものの、それくらい旦那になら喜んで。 きっと今頃、自分のために大きなケーキを買っている。そしてまっすぐ、ガキの待つ家に帰るんだ。 「おめでとうって、言えばよかった」 上滑りする言葉でも、ちょっとは打撃を与えられたかもしれないのに。 ここぞってときに働かない悪知恵が、かわそうで憎かった。 PR