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木曜日

せっかく曜日詐称したってのにきのうの分日記書きそびれた。負けた。なにかに。

雨が降り出したもんで、乗継の駅で降りて漫画買ってマックで時間潰してから帰宅したよ。
しっかし岩本ナオっちの本で買いそびれてるのあったから発見できてうれしかったー。

きょうの帰りの電車はなぜか読書している方が多かったですよ。
京極堂のコミカライズしたやつ、モーニング、燃え剣、20世紀少年、IKKOの啓蒙本とか。窓に映ってまるわかり。
時間帯のせいなのかしらー。空いてないと、文庫本ですら手にするの難しいしなあ。

おりたたみで小話です。途中で止まっているサイトの続きものの更新は土日にゆっくりやりもっす。






「なにもないぼろ屋敷ではございますが、ひとつだけお客様に胸を張って、お披露目しておるものが、あるのですよ」

欄間を通った昼の明かりは鶴になり、磨き上げられた廊下で群れをなしている。
「昔当てた商売で為した財を、細々と食い潰す隠居暮らし」。御冗談を。障子は日に焼けた様子はないし、畳のささくれなど数えるのも馬鹿らしいほどに、青々と匂っている。
床の間を飾る焼物や掛け軸こそ見当たらないが、隅々まで手入れの行き届いている、少なくとも、きりきりと財布の紐を締めつけて、つましい日々をなんとか送っている、という風ではないことは疑いようがなかった。

「土方殿、こちらです。…おや、丁度いい。降りておいで。」

当主が垣根の高いほうへ声をやると、枝をばさばさ切り落としていた、頬かむりの男が、どうやらこっちを向いたようだった。
男は柄の長い鋏を抱えていたが、腰にひっかけていたたすきを片手で結わえ、するすると、そのぎらつく刃物を地面まで下ろした。地面についた柄は円を描いて踊り、二度は跳ねることなくぱたりと地面に寝て静まった。
それを見届けると、男は腰かけていた枝から体をずらし、はしごも使わず、滑るように幹を滑り落ちた。

「見事なものですね」
「でしょう。うちの庭はすべて、あれが世話をしてくれているのです」
「ああ…左様ですか」

妙技に見とれて一時失念していたものの、そもそも当主が見せたかったのは、目の前に広がるこの庭なのだった。
実のなる木もなく、艶やかな花の蕾も見当たらない。季節を外したのだろうか、彩りには多少欠ける気がする。
なによりも、緻密に固く刈り込まれている枝の、作り物めいた有り様が、窮屈な印象を与えた。要は、優美さよりも多少の遊びや荒々しさを好ましいと感じる、土方の趣味ではなかったのだ。
(自慢する相手を間違えたな)
土方はひっそりと、目の前の主人に後ろめたさを含んだ同情を送った。
視線に気づく様子もなく、後ろ姿の主人はなにやら、先程の男とぼそぼそと言葉を交わしている。

「姿が見当たらないと思ったら、やはりこっちに居たのだね。野良着とはいえ、ぼろぼろだ」
「お客様ですかィ。なんでしたら僕は奥へ引っ込んでいましょうか」
「いいや。せっかくだ、ご挨拶なさい。…ああ、土方殿、このような恰好で大変失礼かと存じますが、なにとぞご容赦を」
「いいや、私こそ突然お邪魔したのだし、構いませんよ」
「そうおっしゃっていただけますと…これ、お前。その頬かむりくらいは取りなさい」

頷くと、それと同時に白い布を頭から外し、頭を振った。
現れたのは、飴色の髪、そして、夜の色の沈む目。

「これは、弟の総悟です」

当馬の主人が、その厚みのあるてのひらが指し示す人間は、たしかに先の晩、闇に紛れて消えたのと、同じ顔をしているように思うのに。

「はじめまして」

すうっと細められた深い青には、驚きも、おかしみも、まして恐れも喜びも、なんの感慨も読み取れなかった。



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