[PR]
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
たとえばこうして、なにげない風を装って颯爽と、土方さんが俺の前を行く時は、決まってなにか小さな不運をこじらせているときなのだ。
普段からあまりにこにこしている性質ではないけれど(おおいやだそれこそ気色悪い!)、眉間のしわを深くして、人生をななめ45度の位置に回って眺めているような、そんな顔をしている。通り過ぎればすべてのガラス窓に、赤裸々なありのままの姿が映し出される。それに気付かず土方さんは、相変わらずのしのしと足を進める。
ひたすら煙草をくわえるだけで、その唇からは俺への説教も朝飯への愚痴も出てこない。
人様の喧嘩をまぶしそうに見つめているってこともない。
テレビ欄もニュースの占いもチッェクし損ねた俺は、なんの話題の持ち合わせもないものだから、自然、無言になる。
すいっと消えてもきっと今日はお咎めなしだろう。そう確信しているからこそ、俺は革靴の先で、前の地面に落ちた影を、同じリズムで踏みしめる。従順な犬というよりも、ペンペン草に戯れる猫みたく。
「お」
「・・・?」
街の空気ごと浚っていく風が吹いた。
鼓膜を震わす騒音に、足を止める。
きっと雲を切るような高さ。何百メートル上空を、けたたましく騒がせながら、飛行船が泳いで行く。
「くじら」
ふっと笑った気配がした。
俺は、油断しきったその背中にひとつ、拳を。
綻んだ口はきっと、煙のかわりに俺への報復の言葉を吐き出すに違いないから、
土方さんが振り返るのを、意地悪い顔で出迎える準備をした。