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金曜日

日付どころか月まで変わっているそうですね。

小話です↓




「土方さんはこの夏休みなにをしますか」
「ベンキョー」
「つまんねーの俺は世界一周しやすぜ」
「つまらなくねえだいたいお前も補講参加するんだからな。なにその顔。自分も受験生だって知ってんのか知ってるよね総悟くんよ」

そう畳みかけると、不満を顔中に貼りつけた総悟はごてーんと部屋の隅のほうへ横転しつつ逃げた。

「夢がねえの・・・」
「お前は夢じゃなく現実を見ろ。進学する気あんなら」
「進学ねえ・・・」

あんまりない、と呟いたのにはあえて返事をしない。
この出来の悪い幼馴染をどうにかして大学生にしてやりたいと粉骨砕身している俺のうつくしい友情をこいつは、いつでもにっこり笑顔で「いりません」って突き返す。
それでも俺はこいつの家に通う。
任せろ学級文集の「面倒見がいい人」部門で一位に輝いた俺だ。

「土方さん俺じつは大富豪なんでさァ」
「・・・あーそう」
「聞いてんの」
「きいてるきいてる」
「このあいだ買った宝くじが当たってやして。いっそまったく新しい人生でも始めようかなーって」
「え、え、え、マジで」
「ちょうマジ」
「いくら」
「百万円」
「ばか」

思わず手が出る。
パコンといかにも軽そうな音がした。

「だいたいお前、大学入るんだったらそうでなくても入学金とか授業料とか嵩むんだから、ちったあ蓄えを持て」
「宵越しの金は持たねえシュギなんでさー」
「・・・ちょっとお前そこ座れ」

ルーズリーフを一枚引き抜いて、俺は白い紙面をみっしりと文字と数字で埋めていく。
月々の光熱費。食費。それに加えてこいつが浪費しそうなゲームとか菓子の類の支出まで。
カツンと最後に点を打って、項目を並べ立ててると随分な額になった。

「いいか総悟。生活するってのはこんだけ金がかかるんだ。これは概算だがな、予想外の出費ってのももちろんあるし・・・」
「はあ」
「真面目に聞けよ」
「聞いてやすけど、土方さん、俺が今も一人暮らししてるって忘れてねえ?」
「・・・」

そうだった。親元にいる俺と違ってこいつは、今もこの一軒家に一人で住んでいるんだった。

「ご高説ありがとうございます。いやー土方さん若いのにしっかりしてやすねー」
「うっせ」
「そうヘソ曲げねーで。ホント感心してんですよ。うちの家計を切り盛りしてほしいくらい」
「おほめにあずかり恐縮だよちくしょう」
「いっそヨメにきて」
「お前みてえな生活能力なさそうな大黒柱なんてごめんだ」
「ひでえの」
「ヨメに来るなら世界一周連れてってやるよ。新婚旅行で」
「うわーあいしてるダーリン」
「俺も」
「俺も」
「・・・ハイ?」

ん?て顔すんな。

カロン、と麦茶の中の氷が解けた。
たぶん室内温度が上がったせいだろうと、のぼせた頭で考えた。

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