火曜日

ただでさえ整った顔を最大限にきらきらさせて、「そんなあのひとが好きなんでさァ」なんていうからひっぱたきたくなる。

「なんで、これっきりってことで」
「あーまーそうね」
「さっすが旦那。後腐れがねーことには定評がありやすね」
「かっこつけてーのよ」
「やせ我慢だ！」

いっそいつもみたくやらしく性悪に笑やいいのに、今日に限って穢れも知らない天使みたいに白い歯を見せて笑いやがって。
「元気でね」それしかいえなくなるっつーの、だ。

「旦那も」
「はいはい」
「チャイナも眼鏡も姐さんも。あ、あのでけー犬も」
「はいはいわかったから」
「旦那も」
「二度いったね」
「大事なことなんで」

それでとうとつに、ふふって優しいきもちになった。
俺って寛容で大人だから。この糞ガキの気紛れにも我が儘にも、死にゃあいいのにと思うの八割かわいい二割であいてしてきたんだもんなって。

「駆け落ちでもする？」
「またの機会に」

あららふられた。
当たり前。最優先事項においでと呼ばれて、この子がわんといわないわけがない。