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月曜日

折り畳みで小話です。


「沖田さあーん稽古つけてくださーい」
「ずりいぞ俺が先だ!」
「なに言ってる一番隊が優先に決まってんだろ!」
「ったくせっかちな奴らだぜィ順番だ順番」

はい!と一斉に敬礼していきいきと試合稽古に励む沖田ウィズ隊員たちの姿に、俺は思わずちっと舌打ちをした。

「馴染みすぎだろ……」
「まあまあ。そう妬くなトシ!」
「妬いてねーよ」
「あんまりソワソワしないでってな。そりゃあ、ああやって皆に慕われてんのを見たら焦っちまうのも無理ないが、お前が誰より一番だろ、総悟は」
「焦ってねえし!それにあいつの一番は近藤さんだろ。すっげえ懐いてるじゃねえか」
「なんだやっぱりヤキモチか。いいね~若いってのは」

快活に笑う近藤さんが憎らしい。
人の気もしらないで。

「……はじめ、総悟が早々に、お前にてごめにされたって聞いた時は、俺も真選組の父としてげきおこぷんぷんまるだったが」
「いや手ぇ出してねえって」
「今となっちゃあ、花嫁の父のような気分だ。トシ、総悟を幸せにしてやってくれよな」
「いやだから手ぇ出してねえよ?」
「式はいつにしよう。俺、引き出物のバームクーヘンって結構好きなんだよな。一枚一枚剥がして食うのがまたおつなんだ。知ってる?万事屋の奴、あれ3つまでなら一日でいけるって豪語してたぞ」
「式も挙げねえよ!聞けよ!」
「なーに照れてんだ」
「なんであいつなんかと添い遂げなきゃなんねーんだ!勘弁しろ!」
「えーでも、愛し合ってんじゃん?」
「愛?好きでもなんでもねえよあんなやつ!」

かしゃん、と背後で音がした。
振り向けば総悟が、竹刀を放り出して道場を出ていくとこだった。

「…………。」

長い沈黙。男達の汗臭さ。

「今のはねえわ」「さすが鬼……食うだけ食ってあとは知らねってか」「誠意がないよ」「副長そんな人だと思わなかった」どよどよと、徐々に大きくなる蚊柱のごとくまとわりつくどよめき。

「うるせえ!!」

一喝しようが、非難のこもった視線はひとつも色を変えることなく、一斉に俺を責め立てた。

「トシ」

近藤さんのてのひらが俺の背を叩く。

「男を見せろ」
「近藤さん……」
「追いかけろ。今すぐにだ」
「だけど」
「おっといけねえ。今からちょうど休憩時間にしようと思ってたとこなんだ。ほら、うちの野郎どももすっかりバテバテだ。おーい誰か!スイカと麦茶冷えてたろ!」
「っ、」
「局長ぉー!持ってきましたがあいにく人数分ないっぽいです!」
「そうか。じゃあトシの分が足りないな……すまねえトシ、お前はどっか別の場所で休んでてくれ」
「そうですよ副長!ゆっくりしてきてください!」
「夕方まで帰って来なくていいですよ!」

やんややんやと騒がしい男どもを蹴散らして俺は、道場を飛び出した。

(総悟)

泣かせたいわけじゃない。



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