土曜日 祭あるのはすごく知ってました。心にバナーをはっておきました。折り畳みで小話です。このあと(毎度おなじみの展開ですが)スパイだったことがばれた沖田が土方に「ゲームオーバー、てところだな」と壁際に追い詰められたうえに ぎゅ…… と抱きしめられ「俺の腕の中に懲役百年、だ」となったところでシティハンターのEDテーマが流れるなか沖田が「百年じゃ……足りねェです」て腕を回し返してハッピーエンドです。 窓際の、だれかが拉げたブラインドから差し込む陽の眩しさに、夢から引き戻される。まだまどろんでいたくて引き寄せたシーツからは、微かな煙草の匂いがした。まさか、くん、と鼻を鳴らしたのを気取られたわけではあるまい。「お目覚めか?」だけど土方の手が、ベッドの上でいまだ体を横たえる沖田の表面に、シーツ越しに触れた。みしりと悲鳴を上げたスプリングにはお構いなしに、土方は沖田を追い詰める。「総悟」とんとん、と指先が肩の関節を叩いた。返事をしないでいると、もう一回。だけど三回目には音を上げた。なんせ元々、長く続けられる遊びではない。陽が高い。「……おきたそうごは、留守でさァ」「へえ?」「出直してくだせェ」「そりゃあ残念。朝食が無駄になっちまう」土方の声が笑いを含んでいるのに気付いて、沖田は密かに奥歯を噛みしめる。「たぶん、五分後に戻りやす」「ああ。五分後に」遠くなる足音に耳を澄まして、沖田は大きく息を吸いこんだ。曖昧な嗅覚に、暴力的な、清潔な匂いが飛び込んでくる。たまご、ベーコン、それにコーヒー。きっとケチャップと、ばかばかしいほどのマヨネーズだって一緒にテーブルにのせている。あと何分何秒。鼻を押し付けたらまたすこし、煙草の匂いが戻ってきてた。 PR