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火曜日

折り畳みで小話です。つづき。




「幽霊って信じますか。」

新八が言った。
信じるか信じないかという問題ではなく現に、どういう巡り合わせかそれっぽい心霊現象を体験したことがある俺だ。望む望まないに関わらず、心霊現象はすべての人間に平等に。
しかし俺は、認めたくない。
幽霊なんて好きじゃないのだ。

「新八くん。聞きなさい」
「オイちょっとそっち眼鏡ですけど」
「あのね。おばけなんてないさ、おばけなんてうそさ。昔のひとが見間違えたのさ。」
「だけどちょっと僕だって怖いさ、ってわけですね。」
「そうそう。幽霊の正体見たり枯れ尾花ってな。いません。幽霊はいません!銀さんはそういうの嫌いです。だいたいなあ、なんのために坊さんが高いお布施とってナンマイダしてると思ってんの。それはね、成仏させるためです。死人拝んだのに幽霊のままじゃ、坊さん仕事してねーってことじゃん。ぱっつぁんの問いはボーズの皆さんに喧嘩売るようなもんよ?はいこの話おわり。おしまい。」
「でも僕見たんですよ」
「……見たってなにを」
「幽霊ですよ」
「新八くん。君疲れてるのよ」
「いやいや、真面目にきいてくださいよ。てかこの話しにわざわざ来たんですから」

聞きたくなかったけれど新八の顔がいかにも真剣だったので、もう茶化すわけにもいかず姿勢を正す。「この間、かぶき町歩いてた時ですけど、たしかにあれは。」
ああなんとなくわかってしまった。

「きっと。沖田さんの、幽霊。」


+++



『土方さーん。』

総悟の声で、ふっと意識が持ち上がった。
どうもうたた寝していたらしい。

『チビのやつ、土方さんの上着もって遊びにいっちまいやしたぜ』
「んだよ起こせよ。あー上着、替え出さねーとな……」
『山崎が冬服はぜんぶクリーニングに出すとか出さないとか呟いてたような?』
「まじで。おいあいつどっちの方行った」
『みんなと一緒に近藤さんのお出迎えについていくみてーなこと言ってやしたけど』
「はあ!?じゃあターミナルまで!?あーくそ、仕方ねえサイズ違うスペア引っぱり出すか」
『俺の貸してあげやしょうか』
「んなつんつるてんのいらねーよ」
『ほんのちょっと突っ張るくれーだろうが見栄張んじゃねーやィ』
「はいはいそりゃーすみませんねえ」

やいやい言いながら立ちあがって、今日の予定を組み立て直す。
近藤さんの代理で出席するはずだった会議が延期になったから、だいぶ余裕があるのだ。もっと早くわかっていれば、決裁処理なんて後回しにして出張の出迎えにいったのに。
一緒にいきたいと駄々をこねていたちいさいのの泣き顔を思い出して、口元が緩んだ。きっと帰ってきたときは、久々の近藤さんに肩車をされて玄関をくぐるに違いない。

「あ、なあそういえば総悟。お前ゆうべ、」

どこにいたんだ、と聞こうとして、気配の方へ向き直って気付いた。
ふよふよ浮かぶ、その姿が。どうも。

「なんかお前今日、薄くね?」
『失礼な!俺ァふさふさですぜ!』
「頭髪じゃねーよ!体が、なんか……透けてる、ような」
『やだなァそんなん今に始まったことじゃないでしょう』

へんなひじかたさんだなあ、と真昼の光の中でけらけら笑った。
いたっていつもどおりの、たわいのない遣り取りだった。


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