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【祝】にせん

さて。
この記事でまさかの2000記事です。ヒ・・・ヒエ~・・・

日記を書くことがない日もある。疲れて書かない日だってある。「土沖以外のネタでもいいのか?」と迷う日もある。もうブログカテゴリ:日常 とでも思ってくださいほんと。

ちょくちょくコメントくださる方から「実は私テニプリクラスタなんです」と告白された時はちょうどいきづまっていたときだったので「あ、沖田だけを好きじゃなくてもジャンル者として大丈夫なんだ・・・」と救われた思いでした。
主食がいっぱいあってもいいじゃないか。パンもご飯もうどんも好き、でいいじゃないか。

まー単純に、日記を書く頻度が落ちたのは老化だと思いますんでそっとしておいてください。
ピョエーそ、そ、そごたんの鎖骨ペロペロォ!みたいなのってね、若気の至りで済むうちじゃないとなかなか叫べないっつーか。
これからは取り繕うことは(なるべく)やめて自然体の日常をお送りしたいですね。
「近所にオーガニック食材を扱うお店を発見。きょうは仲良しの友達がイギリス土産の茶葉をもってきてくれるみたいだから、三時のおやつは腕を奮っちゃおうかな。彼女のお気に入りのティーカップも用意しなきゃね」
※私の考える自然体の日常

つーわけで平素ご愛顧ありがとうございます。
別に記念でも何でもないけど折り畳みで小話です。



総悟は地球から出たことがない。

「いちどくらい行ってみりゃいいのに」

ちかちかと点滅する宇宙船のあかりを顎で示せば、総悟はぼんやり頬杖をついたまま、「はあ」と気のない返事をする。

退屈な張り込みは眠気を誘う。かすかな波音がまたいけなかった。
フロントガラス越しに見上げた空には星と宇宙船ばかり。

「今は格安チケットも出てるだろ」
「あんたは。宇宙とか星とか、そういうの好きですよね」

ふ、と笑ったのが柔らかい響きだったのに戸惑う。
皮肉と殺意と暴力と、そんなさまざまで構成されているこいつの意外なかわいい一面。

「好きっつーか。警護とか付き添いがあるからやむを得ずな」
「個人でも出掛けてたでしょ。観光だか修行だか知りやせんけど」
「よく覚えてんな」
「うちの隊の連中、非難ごうごうでしたもん。急にシフト変更して休暇取ったくせに土産のひとつもねーのかよ、みたいな」
「……」
「あ、これチクりてーわけじゃねえですよ。現場の悲痛な叫びが無慈悲で横暴な上官殿になんかのハプニングで伝わればいいな~って思った末の独り言でさァ」
「でけー独り言だなオイ」
「独り言と喘ぎ声ははっきりと、ってーのが俺のモットーなんで」

べしんと叩けば蹴り返されて、そうしてるうちに無線に呼ばれて有耶無耶になった。

ああそういえばあんなやりとりをしたっけ、と思い出す。
ターミナルは封鎖され、塵溜めみたいなこの星に残っているのは、貧乏人か変人ばかり。

いまや宇宙へ飛び立つ機会は永遠に失われた。

俺ははなから残る気だったが、総悟はどうだろう。
混乱に乗じてどうにでもしてやれたかも、具体的にいうと密航のひとつくらい便宜を図れたかもしれないなと、ふと思ったのだ。
ふつうの顔をしてふつうに飯食って仕事をしていたからすっかり聞きそびれていたけれど。

涼んでいた縁側から、ふらりと外から帰ってきた総悟が、塀によじ登るのが見えた。
月のない夜、暗闇を背にしてすこし伸びた髪を靡かせる。「なあ」気付いたらしい、身体がすこし、こっちに向いた。

「なあ総悟、お前よかったの」
「なにが」
「宇宙行かなくて」
「――聞くの遅くね?」
「まあ、たしかに」
「ねえ土方さん、どっから宇宙?」

そらに向かって指差した。
つられて仰げば、広がっているのは一面の夜だった。

黒いばかり。
どこから空で、どこから宇宙で。
定義があろうが、地面に足をつけて見上げるだけの俺にはただただ途方もなく。

「……知らねーよ」
「知らねーとこに行かせようとすんなよ」
「そういうことじゃねえだろ」
「土方さん」
「んだよ」
「土方さん、俺ね。結構すきなんですよ。武士道とか、恩義に報いるとか、そういう古臭いの」
「そういう……あー、」

そうかもなと納得する。
飛び道具も携帯も、新しいものを難なく使いこなすくせ、趣味や嗜好に関しては年の割に妙に爺くさいところがあった。

「まさか近藤さんほっぽって行けないでしょ」
「それはなんとかするって」
「まあなんとかなるでしょうけど」
「どっちだよ」
「俺、畳の上とはいわないけれど、この星で死にたいし」
「でもお前まだ若いし」
「姉上がいた。姉上が生きていた、近藤さんが生きているこの星で死にたいって思うのはあたりまえでしょう。若いとか関係ないですよ」

ねえ?と。
あかりの乏しい夜のことだ、表情なんて見えないけれど、きっと、わかって当然という顔で。

「――俺はどうでもいいのかよ」
「そりゃね」
「かわいくねえ」
「なんかあんたは、皆死んでも誰が死んでも、勝手に生きててくれる気がする」

総悟は少し身をかがめ、塀からぴょんっと飛び跳ねる。
ざし、と軽やかに着地するのを見世物みたいに眺めてた。

ずかずか俺に向かって歩いてきて、擦れ違いざま「腑抜けんなよ」と総悟が言った。
まったく生意気にもほどがある。抱きしめてやろうか、と思うのはこんなときだ。





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