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火曜日

まあなんちゅーか今日早く帰ってこれたんですよね。だから明日の分も日記書いておこうかなって。

折り畳みで小話です。女体化。

総悟が肩ひもをずり下げて谷間を見せつけるような恰好をしていたので反射的に「ちゃんと着ろ」と乳を揉んだ。
そうだった女になってんだよなとぼんやりした頭で思い出す。
人のふり見て我がふり直す。もう慣れたぽよぽよした贅肉を寄せようと、俺も自分の胸元になんとなく手をやって、今度こそちゃんと思い出した。

女、直ったんじゃなかったっけ。



ひととおり確認して確信する。
俺の贅肉は取れていたし山崎は案の定山崎だったし近藤さんもちゃんとゴリラだった。

「なんでお前だけ女なんだよ」
「んなこと言われても」

総悟はあくびを噛み殺しながらめんどくさそうな顔をする。
無理やり引っ張ってきた近藤さんはおろおろしている。

「あいにくこちとら生まれたときから女だったんで今更どうこう言われやしても」
「にゃっ、」
「噛みなさんな」
「そうだ落ち着けトシ」
「うるせえ」

こいつのいつもの性質の悪い冗談だと頭ではわかっているのに動揺してしまったちくしょう。
同席してもらった近藤さんは座りの悪そうな顔でちらちら俺の様子をうかがっている。「トシ」
困り切った顔だ。そりゃそうだ。俺にもなにがなんだかわからない。

「あのー、まあ落ち着け。とりあえずさあ、総悟なんてまだ着替えも身支度もしてないしさあ、話なら飯でも食って落ち着いてからにしない?なにがあったのか知らないけどさ」
「いやいや落ち着いていられっかよこれが。女だぞ?女」
「そうだよ女の子なんだからさあ。寝巻きでふらふらさせてちゃよくないだろ」
「女扱いしねーでくだせェ」
「するかバーカ」
「いやいやいや、しようよ!総悟くんホラむくれない!わかってるよ総悟はうちの男どもよりもよっぽど強いからね!ね!」
「・・・うっ」

喧嘩すんなっつったろーが、という声とともに近藤さんの肘鉄をもろに食らって俺は無様に呻く。総悟が明らかに暗い笑みを浮かべる。くちびるが ザマアミロ の形をつくる。俺は フザケンナ と返す。
またなにか悪意を返そうとしたらしい総悟の口元がゆがんで、発せられると思った声は「へぷしっ、」くしゃみに変わった。

「うあー。ハナでやした」
「ちり紙はてめーの横にあるから床で拭くんじゃねーバカ」
「トシ、なんか羽織るもの貸してやれ」
「いりやせんなんかくさそうだし」
「ざけんな勝手に震えてろ」
「トシ。」
「・・・わあったよ」

近藤さんの視線が厳しい。というか本日、俺へのアタリが明らかに厳しい。
やはり女には甘くなるんだろうか。
ちょっと前まで女になっていた実体験から、フェミニストとして生きようとでも決意したんだろうか。それにしたってそれは女のふりをした総悟なのに。

おとなしく箪笥を探る。俺の着流しでもよかったが、あまりだぼついていても嫌がるだろう。
なるべくぬくい上着のほうがいいかもしれない。割と真面目に箪笥を探る。探す。
確かに、ほぼ下着同然の恰好で長々と引き止めているのに罪悪感がないわけでもなかったのだ。

「ん?」

見慣れない布地に違和感を覚え、取り出した。
(赤い布?)
赤い。赤いスカーフ。襞になった紺色、同じく紺色の衿。衿を飾る真っ白な線が目に眩しい。

「これって」
「・・・セーラー服じゃねーですか」

いつの間にか俺の背後に忍び寄っていた総悟の地を這うような声に、びびくぅ、と震えが走った。
俺の手にはしっかりとセーラー服が握られていて、わけもわからず総悟と手元を交互に見やる。
総悟の顔にはなんの表情もない。

「土方さん、そんな趣味が」
「違う!違うだろコレ、お前のだし!!」

そうだ確かに総悟はこれを着ていた。
かぶき町のてっぺんを目指す、太夫と呼ばれてみせると豪語してその夢をあっという間に現実のものとして・・・
現実。
あれは現実だったのか?ほんとうに。

呆然とする俺をよそに、総悟は「俺そろそろ朝稽古の時間なんで」とすいっと部屋を出ていった。

「そ・・・」
「トシ」
「何が起こってるんだよ」
「・・・・・・」

近藤さんが、陽だまりのような表情で首を左右に振った。「男だな」なんのことだ。


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