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「総悟、漬物好きか」と聞かれてまあ普通に。とチー鱈くわえながら返事をしたのはいつだったか。
そういやそんなやりとりをしたなアと思いながら、新聞紙にくるまれたタッパーを両手で抱えて立つ土方さんと対面する。アパートのドアの前。
実家に寄ってきたの?と口を滑らせそうになる。
俺は知らない土方さんちの家庭の事情。ちょっと複雑らしい、とだけきいている。
改まって尋ねるタイミングを失って、そのまま置いて寝かせている。
「三合炊いて」
「足りねーでしょ。近藤さん一人で二合食うのに」
「あの人大阪出張だってよ。聞いてねえの?」
「ねーですよ」
「あ、そ。」
なんで嬉しそうなんだ。謎のにやけ顔に鍵を握った拳を叩きこんでやろうかと妄想しつつ、三度めでようやくうまく回った鍵にほっとして、どうぞと中に招き入れる。
「留守だったらどうするつもりだったんです」
「大家がそうそう留守にしねえだろ」
「しますよ。俺だって忙しいんですぜ今だって役所とホムセン回って来たし」
「24時間程度なら余裕で待つ」
「知ってますか土方さん。今ねえ、電話っていう離れていてもお話できる便利な機械があるんですよ」
「まだるっこしいの嫌いなんだよ」
その懐のスマートフォンは銃弾避けかなんかなのでしょうか?
いいえ、まだるっこしいとか面倒とか言いながらも、厳選された使いどころがあるのです。
店子や業者はともかくとして、俺のプライベートのアドレス帳はたぶん一般的に見て貧弱。あやかりたいとは思わないけれど、土方さんのアドレス帳は平均よりとっても華美で膨大と思われる。
気がつけば飲み歩いてるし、俺みたいな、昔いいだけ悪態ついた幼馴染にもこうして声をかけて顔をつなぐ、そのマメさには素直に感心してるんです。
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「うまいな」
「ですねえ」
「悪ぃな帰って早々飯の支度させて」
「いえいえおいしいお漬物のご相伴に預かれて光栄です」
「・・・・・・そりゃよかった」
照れたように笑う顔を見て、急に居たたまれなくなった。
(憎むことは縛られることだから早く許してしまいなさい。)
尊敬する姉の言葉が蘇る。
別にもう憎んでないです。ほんとです。
でも縛られているんです。
「おかわりどうぞ」
しゃもじを取りに立ったのは顔が見れなくなったから。
罪滅ぼしのつもりで白米を、ここぞとばかりに大盛りにした。