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土曜日

また雪が降るとかいってるけどよしとくれ。

折り畳みで小話です。
「割引券あるんですけど一緒に行きませんか」

目の前で紙片をひらひらさせると、沖田さんは上唇だけをひょっと上げて、「うん」と頷いた。
わざわざ金券ショップで購入した甲斐があった。

局長が接待で寿司屋を使ったって話に、ずるいずるいとぶーたれてたのを目にしてから、よしよししめしめと思って機会を狙ってたのだ。
薄給の俺とて奮発すりゃあ、職人達の技が光るそれなりの(つまりは局長が行ったような)店に連れていくこともできるけれど、「対面式のレストランより、回転寿司の方が親密度アップ」とテレビでやってたので、敢えて、だ。

「んじゃさっそく今日の昼飯にでも・・・」
「なにお前ら寿司行くの?」
「うわっ」

心の中では、うわっしねっ、という暴言が弾けていたけれど、すんでのところで途中で半分飲みこんだ。
柱の陰に佇む副長は、俺に睨みをきかせてからぷはあと煙を吐いて、「奇遇だな俺も寿司が食いてえと思ってたところ」なんて言いつつにじりよってくる。

「残念ですが副長、割引券二枚しかなくって」
「んなもんなくっても奢ってやるよ。なあ総悟?」

副長はいつの間にか俺と沖田さんの間に身体を滑り込ませたかと思うと、その可憐な耳元で囁いていた。まるで愛のようにな。
一方沖田さんは表情も変えずにぷいと横を向く。いいぞ。

「土方さん仕事忙しいって言ってたじゃん。外に行く暇なんてあるんですかィ」
「ああ?ったく、構ってやらねーとすぐ拗ねんのな」
「んなこたねーし・・・」

押せ押せの副長に対し、沖田さんは本日いまいち乗りきらない様子。
俺はここぞとばかりに攻めに転じる。

「沖田さんそろそろタイムサービスが始まります。沖田さんの好きなバッテラや茶わん蒸しも回り放題ですよ!」
「えっマジでか」
「俺と皿重ねに行きましょう!さあ!」

副長の顔に敗北の色が滲んだ瞬間、玄関から間延びした「ただいまあ~」という声が響いた。
局長の帰還。
それはいいのだけれど。いいのだけれど、今日はなにやらガサガサとビニール袋の音がして。

「皆おみやげー!太巻きいっぱい買ってきたから食べようよー」

目の前にいた沖田さんが忽然と消えたかと思うと局長の回りをちょろちょろしながら「俺いちばんでっかいのがいいでさ」と甘えていた。
「はっはっはどれも同じだぞー?」眩しい。

「おっ、トシ!山崎も!ほーら食え食えおいしいぞー」
「・・・・・・」
「どうした?腹減ってない?」

意気消沈する俺と隣の人をよそに、沖田さんはとっくにもぐもぐもぐもぐ頬張っている。ふへーへふ、とかなんとか呟きながら。ああかわいいななにをしててもかわいいです。

「・・・俺もいただくことにします。」
「ああ。」

うまれかわったら俺局長になりたいです、と呟いたら、副長がわりとマジで殴ってきた。八つ当たりだ。


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