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日曜日

暖房の効いた電車の中で趣味がないのと熱弁を奮う女子大生のおしゃべりを、ちゃんと聞こうと私は音楽プレーヤーの電源を落としたのであった。
(でもアラシのファンらしいです。それ趣味でいいんじゃないの?)

折り畳みで小話です。





「おうトシ」
「なにしてんだ」

笑顔の近藤さんはいつもどおり。当社比一・五倍甘えた顔の総悟が横に並んでいるのだっていつもどおりだ。
いつもと違ったのは、近藤さんの指先には煙草が差し込まれていたっていう点。

「練習だよ練習」

そういって、近藤さんは口元に煙草を持っていく。
すると総悟が、しゅっとマッチを擦ってともした火をそろそろと、煙草の先へと近づける。
ふう、と近藤さんは煙を吐いて、総悟は煤けたマッチをかつんと、灰皿の中に放り投げた。

「今の、向こうさんが懐を探り出したくらいのタイミングで。あと、もしも煙草を吸うよう勧められたときは、断わっていいから。あいにく規則でして、とでもいって申し訳なさそうにしときゃあいよ」
「気分悪くされやせんかねェ」
「なに、喫煙所まで同行して火の用意までしておけば充分だよ・・・・・・」

☆☆☆

「面白くねえってツラに書いてありやすぜ」

煙のにおいをぷんぷんさせて、総悟がにいっと笑う。

「そういうんじゃねえよ」
「でも不機嫌だ」
「―――これは。」
「近藤さんだっていつも、好きでもねえ煙しこたま吸って不本意な媚せっせと売りまくってんのに、あんたがそんなカッチンでどうすんですかィ。らしくねえなあ」

明日の護衛は愛煙家のお偉いさんだ。扱いが難しい、と赤字で付記したいような。
張り付きにご指名された総悟が恥をかかないようにと気遣って、近藤さんがわざわざ事前に、もてなしのレクチャーをしてくれたのは、わかる。
なんなら俺から、「局長直々に手ほどきしてくれたんだありがたく思えよ」と煩わしいくらいに偉ぶって諭してやってもいいくらいのシチュエーション。とも思うのに。
なんだかすっきりしない。
自分でもなぜすっきりしないのかわからないから、触れずにおこうとしたのにずけずけと、人の表情について言及しやがってこの野郎。

「嫉妬してんでしょう」
「な、」
「俺が抜擢されて、近藤さんにもよろしく頼むって任されて。こういうの今まで土方さんの役目だったから妬いてンだ!」
「・・・・・・あー。」

総悟はそれはそれは得意げに、『副長の座は俺のもの』という節のついた独りごとをふわふわ歌いながら俺の横をすり抜ける。きっと明日の護衛も接待も恙無くやってくれることだろう。心配なんてしてない。そろそろあいつだって一人前だと俺だって認めてる。
と、独り激しく頷いて、さっきよぎった考えを必死に打ち消す。
嫉妬してんでしょう、って。
(近藤さんに?)
なぜかそう言いそうになった俺の気持ちが、自分のことながらなぜかわからない。


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