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木曜日

【怖い話】※大人向け
帰宅したらエアコンが付けっぱなしだった。

折り畳みで小話です。タイトルかぶってたので改題しました。
「この戦いが終わったら俺は恋人に指輪を買うんだ。」

そしてプロポーズを。と。
この戦い、ってそりゃ至って真面目な勝負事とはいえ、週に一度の毎度お馴染みなんてこたないことこの上ない、ただの試合稽古なんだけど。
むさ苦しい暑苦しい男共の並ぶ中でそんな場違いなことを嘯くから、とりあえずサカナにされるのは当然だ。

「よしどうせだから条件つけようか」
「沖田隊長から一本取ったらプロポーズ、てのでどうだ。じゃなけりゃ指輪だとかちゃらついたもん買うなんて罷りなんねえ。おーい沖田ぁ」
「話は聞かせてもらった。かかってこいや受けて立つぜィ」

冗談じゃないですよそんなこと言ったら俺一生プロポーズできないじゃないですか、と涙目で訴えるのをさらっと聞き捨てて、俺は面を装着する。「行け沖田よ俺ら独り身の男たちの悲しみを背負って立ち向かえ」





「聞いたぞ人でなし」

突然頭を小突かれる。
ぐいーと体を転がして見上げれば、土方さんが呆れた顔で見下ろしていた。

「ノックしろ入っていいですかって伺え足蹴にするたあどういう神経だ、っていっつも言うくせに。」
自分はいいのかよ、とまたぐいーと元の位置に体を転がして、丸まった。「俺はいいんだよ」ろくでなしめ。

「噂になってんぞ。沖田さんが某隊士の一世一代のプロポーズを邪魔して破局に追い込んだらしいですう、とかなんとか」
「そりゃ大変だなあ」
「面白半分で人の人生ひっかきまわすなよ」

首だけ回して、土方さんの顔をじいっと見て、また戻した。「なんだよ」と土方さんが零す。「べつに」と俺は答えた。
こうしておくと土方さんは勝手に反省して、俺に擦り寄るのだから簡単だ。
きっと、傍に腰をおろして優しげな声で取り繕おうとする。
「・・・・・・なんだってんだよ」
ほら。

「一番隊の若いのでしょう。結局指輪も買ったしプロポーズもしたそうですぜ。」
「で、結果は」
「近く『嫁さん』の故郷に挨拶に行くとか。めでたしめでたし」

俺に負けたらプロポーズは中止のはずだったけど、なんとか勘弁してくださいって必死の形相で頼み込むから、その剣幕に、というより実直さに負けてジャッジメントは「沖田隊長に好きな食べ物をもう食べられないってくらい奢ること」というゆるい条件つきで反故にされた。
とはいえ勿論俺に食いもんを与えるより先にやることは山積みとみえて、その条件も効力があるかどうかは怪しいもんだ。いつでもたらふく奢ってもらえるように腹八分目でおさえてるけど。

運を味方につけるというより、運命に打ち勝てるような、そんな人間はいるのかもしれない。うらやましい話だ。
なんだか俺は、放り投げられたきぶん。
空腹も手伝ってじゃっかん込み上げる、虚しさ。

「てなわけで、土方さんが耳にした話はまったくまぎゃくのデマでさァ訂正の上お詫びしろィ」
「思い込みでお前のことを疑って悪かった。」
「おお、素直」
「お詫びに飯でも行くか。かりっかりのアラレが乗った鯛茶漬け食わせてやるよ」
「餌付けされてたまるかってんだ」
「じゃあ毅然としてろよ。餌がなくてもてめーなんて簡単に釣れる」

思い上がることが趣味で特技の土方さんは、今日も自信満々だ。俺がノーと言ってもイエスと言っても堪えない。
俺はとりあえず「腹減ってねえし」とごろにゃん転がって、土方さんの膝がしらに頬を寄せた。土方さんは声を出さずに笑う。甘い甘すぎる。
そうこうしてるうちにぐうと腹が鳴るだろう。そしたら俺はほいほいと飯屋に連れてかれて、腕を引かれるままに土方さんと寝る。
それこそ賭けてもいい。
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