金曜日 ※昨日の記事にコメントありがとうございました。返信しておきましたので心当たりの方どうぞ! 飲み会が十時頃に解散になったんですが、上司が「これから別口の集まりで焼肉食べ放題なんだ・・・」と決死の表情で言い出すからびっくりでした。胃腸丈夫!! 折り畳みで小話です。 「裏の爺さんが喉に団子を詰まらせてポックリだとさ」 「九十くらいだったかね」 「九十七だってよ。嫁さんも倅も危ないから団子はよしとけってあんな口酸っぱくして言ってたのに、あの偏屈爺、まったくききゃあしなかったからなあ。挙句が、畳の部屋に団子ころころ転がして、バタンよ」 「でもま、大往生だ。爺さんも悔いはねえだろう」 座敷で話し続ける四十五十ほどの中年をうしろに、まだ温かい豚汁をすする。 メインのメンチカツ定食はまだ来ない。「おニーサン、揚げるのに時間かかるけど大丈夫?」と聞かれた時に、カレーかハヤシに変更してしまえばよかった。 カウンター席で隣り合っている総悟は、生姜焼き定食を頬張っていた。既に三分の一くらいしか残っていない。俺に遠慮する気配は微塵もない。遠慮されたら逆におそろしい。 手持無沙汰になって煙草を取り出すも、『ランチタイム禁煙』の貼り紙に阻まれ、ままならない。 うしろの中年達はまだ、爺さんの話を続けていた。 ろくでもねえ頑固爺だった隠居する前は雷親父でこんな目に遭った、と二人で順繰りに喋くるその口調は悪意というより親しみが滲み出ている。嫌われ者というわけではなかったようで、知った仲でもないのにほっとする。おかしなもんだ。 総悟は白い飯をぱくぱくと食べる。 うしろの会話なんて全く聞こえていないかもしれないし、飯に忙しくて俺と会話をする気もないかもしれないがそれならそれで。独り言のつもりで俺はいう。 「好きなもんに埋もれて死ぬたあ、羨ましいこった」 「へい」 とん、と俺の目の前にマヨネーズの業務用チューブが置かれた。店名がマジック書きで記されている。 なんだと聞く前に「死ねってことですよ」とさらりという。埋もれてしねよと。 「まだ死なねーよメンチカツ食ってねえし」 「そこまでメンチカツに義理立てしなさんな。来世でいいコと巡り会えるかもしれやせん」 「生姜焼き旨そうだな」 「そりゃもう」 総悟の美しい箸さばきで着々と食べ進めていく様子を眺めているうちに、ようやく奥から白い皿を掲げて店員がやってきた。「お待ちどうさん」固そうな衣のメンチカツがごろんごろんと皿の上に二個並ぶ。そして山盛りのキャベツが添えられて。 マヨネーズの蓋に手をかける。総悟が批判的な視線を投げてよこすのに気付く。 「なんだよ」 「土方さん豚かぶってやすぜ」 「お前に言われたくねーよ」 豚汁はメニューにかかわらずついてくる。 メンチよりも豚生姜焼きのほうが深刻じゃないか。そう指摘してやると総悟がああそうかァと間抜けな声を出したあと、取ってつけたかのように「うるせー豚野郎・・・」と呟いた。 「てめーこそ豚だらけだろーが」 「いちいち細けーことうっせえなァ、マヨと煙草に埋もれて死ね」 「そりゃ成仏できそうだわ」 食事は冷めないうちにとしごく最もなことを思い出した俺は総悟の攻撃もそこそこに、メンチカツを崩していくことにした。 「土方さんの成敗も供養もお手軽だなァ」 「結構なことだろ。お、うめーわこのメンチ」 「一人でうまそうなもん食ってんじゃねーよ」 「うっせー待てなかったてめーが悪い黙って生姜焼き食ってろ生姜焼きに埋もれてしね」 「俺は刀と酒に埋もれて、てのがいいな」 そのほうがかっけーもん、と総悟がいう。 そりゃ生姜焼きに比べりゃそうだろうけどそれもさみしかないか、ということで。 「お前は、俺の腕の中で死なせてやるよ」 「なんでよりによって俺的ランキング最下位の土方さんに埋もれなきゃなんねーの」 「さあな」 二個目のメンチに箸を入れて、半分にしたところを総悟がかっさらう。 腹いせのつもりなのか単に意地汚いのか。 でもまあ、旨そうに食ってるから放っておく。 PR