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火曜日

仕事で「沖田さん」に電話する用事があってニコニコでした。
無駄に名字連呼するよ。


折り畳みで小話です。
記念すべきオンリーだし本出したいわーんと頑張っていた頃の名残の品です。

「そんな見え透いた手ぇ使うかよ」と怒る土方さん・・・はスペースの都合上入りませんでした。
旦那旦那ぁ、とうれしそうに手招きするから寄ってった。
「なに?」
「これ、見てくだせぇよ」
薬の瓶だった。沖田君が傾けると、からんと透き通った音がする。
「ナニコレ」
「土方さんの骨」
「・・・・・・。」
死んだっけ、という前に「殺すな」と、後ろから保護者が現れた。
「出歩くなら声掛けろって言ったろ」
「お目付役がいたんじゃ自由に見て回れねーじゃねえですか」
「なんのために俺が今日休みとったと思ってんだ」
ひょうひょうと口応えする沖田君と、くどくどと説教する土方君。
最終的には土方君が折れて、「向こうで待ってるから終わったら連絡しろ」と小さい子に言い聞かせるようにして、沖田君を置いていった。
「心配症で困りまさァ」沖田君が目を細める。
「心配させてる自覚が出たのはいいことだよね」
「やだな。心配させてる自覚なんてずっと昔からありやしたぜ。俺が素直にみとめなかっただけで」
「そうなの?」
「そうですよ」

膝をさすりながら、沖田君がしみじみ頷く。
二十歳そこそこのくせに、仕草は老人みたいだ。

「いつ出発?」
「明朝。・・・旦那も暇になったら遊びに来てくだせェ。なんもねえけどいいとこですから」
「暇だってんならいつでも暇だけど、遠慮しとくわお気持ちだけありがとう」
「ええー」
「なにが悲しゅうて男二人のむさ苦しい愛の巣にお邪魔せにゃいかんの」
「土方さんはこっち残りやすよ?」
「人生いろいろだねえ」
「遠い眼しちゃって、旦那がいうと深みがありやすねえ。さすが人生の達人」

俺は別に、自分のことを思い返していたわけではなかった。
足を悪くして、隊長でいられなくなって、田舎に引っ込むことになった知り合いのことを。
それを取り巻くよく泣く親代わりのおっさんと、口うるさい上司。とにかく騒がしい連中のこと。

俺の知らないところで嵐は去って、気付いた時にはすべて事が済んでいた。
沖田君は俺の前では泣いたりしない。足袋を履く時がちょっと億劫で、と世間話のついでにいうくらいで、前と全然変わりがない、ように見える。
一杯だけお茶をご馳走して、それを飲み終わった頃に「それではさようなら」と、深々おじぎをして、沖田君は歩き出した。たまに引き摺るけれど、ふらついたりはしない。足取りは確かだ。
角を曲がったところで笑顔になった。「遅い」なんて怒られているのかもしれない。

薬瓶の中に入っていたのは確かに指輪だった。
誰に貰ったの、って。最後くらい面倒くさがらずに聞いてやってもよかったかも。
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