土曜日 昼まで寝てていいと思うと興奮して寝付けない・・・ というわけで眠くなるまで逆転裁判やろう。みっちゃん大好き。 折り畳みで小話です。 「あいつは?」 山崎に聞いたのは失敗だった。同情的な目、竦められた肩、下がる眉。「副長ご存知なかったんですか。」 「だから聞いてんだよ」 「・・・沖田さんは、局長のお迎えです」 「ハア!?」 「いや俺は止めましたよもちろん。でも沖田さんがどうしても自分が行きたい雨で帰れなくなってるのかもって長靴とカッパ引っ張り出して、局長の傘握り締めて飛び出していっちゃって」 だーだー、というかばりばり、だくだくといった大雨の音が、閉め切っているはずの屯所の中にも響いている。 窓に打ち付ける雨粒も容赦ない。水道にホースをつないでそのままぶっかけたような勢いだ。 この雨の中を? 近藤さんのために? 「スナックすまいる」でまったりしている近藤さんの、お迎えのために? 俺は苦いものが胸の奥からこみあげてくるのを感じる一方、ふと浮かんだ疑問を口にした。 「・・・それって重くね?ひたむきさに胸を打たれるより前に、引いちゃわね?」 「一般的には重いでしょうが、局長はそこまで気にしないんじゃないでしょうか。総悟は優しいなあ、くらいのもんでしょ」 「じゃあどっちに転んでもあいつにうまみはねーじゃねーか」 「うまみ、って。副長・・・かわいそうなひと」 思わず胸倉をつかんだ俺に、山崎は首を左右に振りながら、あくまで優しげに諭す。 「うまみとか、損得とかそういう問題じゃないんですよ。・・・理解できませんか、副長。もしも理解したいってすこしでも思うのなら、騙されたと思って沖田さんを追い掛けてみてください。そこにきっとこたえがありますから」 そんなわけで、俺も雨に洗われることにしたのだった。 「よう総悟。奇遇だな」 総悟が「スナックすまいる」の前にいたのは幸いだった。姿がなかったら、店内まで探しにいかねばならんところだった。 「土方さん」 カッパも傘も気休め程度にしかならず、総悟の前髪はすっかり濡れてしまっていた。 すぐそこまで車で来た俺は袖の色がちょっと変わった、という程度。 「土方さんはパトロールですかィ」 「そんなとこだ。お前、そんな濡れ鼠になってどうしたんだよ。風邪ひかねえうちに帰れよ」 「へい」 「返事だけじゃなくて。・・・ああもう」 遠回しなことは性に合わない。 俺は総悟の腕をひっつかんで、引き摺るようにして店の前から連れ出した。 「ちょ、なにすんでィ」 「いいから来い」 「なにがいいんでさ。近藤さんの傘、これ渡さねえと近藤さんが」 「近藤さんならさっきタクシー拾って帰った。」 さっきまで地面に根を張ったのかと思うくらいの強く抵抗していたのに、途端にふわりと軽くなった。 バランスを崩して、俺と総悟はもつれて転げた。 「そうなの?」 「ああ」 俺は、こうして濡れた地面に這いつくばってるあいだも、俺と総悟に容赦なく降り注ぐ雨が、いい具合にドラマチックだな、とのんきなことを考えていた。 「なんだ。すれ違っちまいやした」 総悟がぽつんと呟く。「もう一カ月も会ってないのに」 「一カ月ってのは、大袈裟だろ」 「でも近藤さん、このところずっと出張と会議だったじゃねーですか。俺も出稽古とかあるし・・・ぜんぜんハナシ、できなくって」 「伝言あったなら預かるし、相談なら俺でもちょっとは親身になるのに」 「そゆんじゃなく。好きだったら、顔だけでも見てえもんなの!」 「はあ・・・・・・」 「なんでそんなこともわかんねーのかなァ」 「わかるって」 忙しくても疲れてても、顔が見たい。声が聞きたい。用事がなくても会いたい。 そんな不自由で愚かしい衝動を体感している。 とにかく今は、雨に打たれていたかった。 PR