金曜日 流行先取り!蚊に刺されたよカユー! そして連休だからちょっと不在にしまーす! 折り畳みで小話です。 「お前まだ起きてんの」 出先から電話をかけてきて、なにを言うかと思えば。 近藤さんの調子はずれな歌声をBGMに、どうも楽しいお店で飲んでいる様子。接待で飲む酒なんてうまくもなんともねーよと以前ぼやいていたけれど、たといまずかろうが、きもちよく酔えるんだから一緒じゃないかって思う。 「電話に出てんだから起きてんに決まってんだろィ」 「眠そうだな」 「眠いに決まってやす午前二時ですぜ、いま」 「あー・・・・・・」 時間を忘れていたらしい。とたん居心地悪そうになって「もう切る」なんていう。 「もう切んの?」ささくれた気持ちを抑えて受話器に吹き込めば、ははっ、といかにもわざとらしく笑う。 その笑いになんの意味があるのか。そうか恰好つけという生き物の生態はこうなのかと俺は、どういうわけか突然にむかむかむかむかして堪らなくなる。 「・・・声が聞きたくって待ってたのに、土方さんは意地悪でさァ」 「え、そ」 と、ガッチャンと受話器を叩きつけた。 我ながらくさい芝居だったと腕組みをして黒電話を見つめる。 数秒置いて案の定、折り返しのベルが俺を呼ぶ。 「・・・悪い」 やはり土方さんはすてきな反応をする。さっきまでの余裕しゃくしゃくな態度はどこへやら、夕暮れブランコのリストラサラリーマンのような声色だ。 さて、どのタイミングで「ばーーーか」とおどけてやろうかと深呼吸していると、これまでざわついていた電波が急にクリアになった。 わんわん響いてた近藤さんのがなり声がふつんと消えて。 「俺だってお前の声聞きたかった、から。」 そう言う。 俺は、「そうですか。」と答えて、今度は丁寧に受話器を置いた。 PR