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水曜日

今日はあんぱんの日かつクラピカの誕生日ですね。
よし。特になにもしない。

週休四日くらいの国にいきたい。折り畳みで小話です。
夜の電車だった。
向かい側に座っていた子供は半分夢の中らしく、左右にゆらゆら揺れていた。
「ママ、おはな」
寝惚けたのかもしれない。突然、なにか乗り移ったかのようにしゃきんとした様子で、その子供が声を張り上げた。
静かにね、と母親らしき女性が子供をいさめて、しかしそれから身を屈めて、子供に顔を寄せると、「あら、きれいね」とうれしそうに付け足した。
ドアに背を預けていた俺は、わざわざ振り返るのも憚られて、隣の総悟がなにか言ってくれないかと期待した。
総悟はイヤホンから流れる音楽に集中していて、俺のほうをちらりとも見やしない。


「あんただって煙草を吸うでしょう」
なにかが原因で、喧嘩というには大袈裟だが険悪な雰囲気になった時、総悟が言った。
「マヨネーズだって病的に好きだし、酒だってさァ、弱いくせに浴びるほど飲む。女遊びは卒業したとかいうけれど、つまり飽きるほどやったってェことだろィ」
「それが悪いのかよ」
「自分に許しているくせに、どうして他人のすることはいちいち咎めんの、って事でさァ」
自由にさせてください。
吐き捨てるわけでもなく、罵倒するでもなく、いっそ憐れむような声で総悟はそう言って、そのあとからだ。俺に対してまるで面白みのない態度を取るようになったのは。

情けないことに俺は、どの発言が原因になったのかよくわからない。
なにか決定的なタブーに触れたのか。
それとも、積み重ねか。今まで俺がなんでもない会話だと思い込んでいたのは盛大な勘違いで、実のところいちいち総悟を不愉快にさせる、無神経な言葉の連続だったのかもしれない。

「土方さん、桜」
ふいに総悟が俺の腕をつついた。
気付けば電車は速度を落としていて、徐々に停車駅が見えてくる頃合いだった。
窓の外には、一面の桜。
青白く光りを放って、はらはらと宵闇をまだらに彩っている。
がたん、と大きく電車が揺れた。終点だと電子音声のアナウンスががなり立てる。
親子連れも、中年も、酔っ払いもぞろぞろと車内から流れていく。
その流れに乗って一足早くホームに降りた総悟が、ふっと振り向いた。
足を止めて、振り向いている。

唐突に、俺は世界に感謝する。たぶん春のせい。
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