土曜日 そんでは大阪行って参りまーすー。 仕事の都合でこのまま一週間ばかり帰りませんのであしからずご了承ください。 折り畳みで小話です。 前に付き合ってた女と見た映画だ。 それに気付いてぼんやりとテレビ画面を眺めていると、テーブルで食パンをふたつにちぎっていた総悟が「あ、見たかったやつだ」と呟いた。 録画しとかねーと、と嬉々としてリモコンを操作する。そういやこいつはこれからバイトなんだった。 「帰り遅いのか」 「え。いつもどーり」 「ふうん」 「?あ、食器は帰ってきたら洗うし。んな目くじら立てねーでくだせーよう皺が増える!」 別にそういうことじゃあないんですが。 流しのたらいにコップとスプーンを放り込んで、コートを掴み取って、鍵をしめて。共有スペースを走る足音が遠くなるまで耳を澄まして。総悟の出がけはちょっとした嵐のよう。 パン屑とか牛乳とか口のまわりについてんじゃねーの鏡くらい見てけと言っても「バイト先で着替えるときにいっぺんにやるからいい」らしい。 珍しく残業もなく早く帰ってこれた。間が悪いと嘆くより顔が見れただけでもよしとするほうが前向きかも。 総悟を連れてどっか外で飯でもって思っていたから弁当屋にもスーパーにも寄ってこなかった。冷蔵庫にはろくなものがない。 総悟の食べ残した半分の食パンをトースターに突っ込んで、あったまるのを待つ間お湯を沸かした。何を飲むのかも決めてない、茶葉の買い置きがあるかどうかも怪しい。 ひとりのリビングでちぐはぐな夕飯を取りながら過ごす金曜の晩はさみしい。 ふと目をやった録画ランプの赤がぱちりと落ちて、番組が終わった事を知らせた。 いつもどおり、って言っていたからあと15分で終わるはずだ。 ちょっと迷って、迷ったふりして、めったに打たないメールを送る。「迎えいく」 明日の食材が切れていたからそのついで。 早く顔が見たいから、だなんて今更言って信じてもらえるとは思えない。 PR