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木曜日

金曜日から二日ほど留守にします。

とりとめもなく折り畳みで小話です。女子沖です。


「死ねば」

蹴られた。
スローで流れていく部屋の風景をながめる一方で先人の格言が脳裡をかすめる。
人の恋路を邪魔する奴は、いや俺は恋路を邪魔したわけではないしついでにこいつも馬じゃない。いやじゃじゃ馬か。じゃあ合ってるってことでいい。

頬に畳を侍らせて、強い衝撃のあった腹部を守るように体を丸めて痛みを逃がす。仏心に期待して頭は守らない。いくらなんでもそこまで鬼ではなかろうと。

「土方さんさァ。久々に仕事以外のことで話しかけてきたって思やぁ随分げすいこと言うんですね」

白い脚を折り曲げて、這いつくばる俺の顔を覗きこむ。
「たいしたことなかったですよ。」それが答え。
誰が相手かは頑なに言わなかったが正直、なんだかんだで衝撃的的事実を具体性で色づけされることを回避できて、心底ほっとしている自分がいる。

見上げれば、うっすら笑っているのが怖い。いつからこんなになっちゃったんだか。

「・・・昔はかわいかったのにお前」
「あんたがそれを言いますか」
「俺じゃなきゃいいのかよ」
「そう。あんた以外にはなにを言われてもいい」

かっこわるい、と総悟が呟く。両手でぐしゃっと髪の毛をつかむから、鳥の巣みたいになっている。ひよこみたいな色の髪の毛。
そのしぐさだけは変わらない、ガキの頃からいっつもそうだ。癇癪起こしてはそうしてた。

「土方さん昔はかっこよかったのにさ」
「今も充分だろ」
「必要最低限ってとこでさァ」

冗談で言ったのに、総悟から意外な高評価を頂戴してしまった。
もうとっくに蹴りの余韻が去ったくせに横たわったままの俺は、妙な居たたまれなさを感じて合わせていた視線を外し、突っ伏した。

「・・・パンツ見えねーんだけど」
「見せもんじゃねーし」
「んだよ。他の奴には見せたくせに」
「しっつけーな土方さんは。飢えてんですかィ」
「かれこれ五年はしてねえからな」
「嘘ばっかり・・・」

嘘ついてんのはお前だろ、とわざと聞こえるように言う独り言。
だいたいおかしいんだ、うちの連中の誰一人として、こいつの相手を目撃していない。

乗ってこい、と祈って願って念じて総悟に、もう一度熱い視線を送れば。

「いつから気付いてたんですかィ」

ほら。
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