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もう風呂も飯もいらないとにかく寝るって倒れこんだ布団で瞼を下ろした、って瞬間に、体に圧力。
強制覚醒、目の前に確認した姿は想像通りのクソガキだった。
「人見るなりさかってんじゃねえよケモノかてめえは」
そっと立ち去る後姿を見送りながら今度こそ俺は、安らかに眠りについた。
ちゅんちゅんと小鳥囀る爽やかな朝を迎えての第一声は「まずった」だった。
ボコボコにするならしろってくらいの勢いで総悟の部屋に駆け込んだのに、布団は綺麗に畳んであってどこかに隠れた気配もない。
洗面所厠風呂場に稽古場、最後に辿りついた食堂で、飯をもっさもっさと掻きこんでいるいる近藤さんに、さりげなさを装ってきいてみる。「沖田は?」
「あれ?ゆうべ会わなかった?」
「会ったけど。今朝見かけねーなと思って」
「・・・・・・もしかして、聞いてない?」
言いにくそうにしているからきっとよくない話題。
聞きたくないなと思った俺は臆病と卑怯で構成されている。あと昨夜の後悔と。つくづくろくなもんじゃない。
「田舎のお姉さんがね」
「あいつ姉がいたのか」
「うん」
ここでまた近藤さんが苦い表情になる。しまった、と零した声が耳に痛い。
「そのお姉さんがさ、元々体弱いんだけど・・・昨夜、倒れちゃったらしいんだよ」
「それは・・・大変だな」
「車使って行くって言ってたんだけど結構な山道らしいし、動揺してるときに運転するのは危ないから、始発乗って行きなさいってなんとか説得してさ、今朝出たんだけどね」
「そっか」
「大丈夫です大丈夫ですって繰り返して、痛々しかったよー。こういうときくらい、大人に頼ってくれてもいいのにね」
その夜に、総悟は帰って来た。
「人混みで倒れたんで周りの人が救急車呼んじゃっておおごとになったらしんでさァ、意識もはっきりしてたし思ってたより元気でした」
同僚に説明しているのを盗み聞く。作っているかもしれないが一応は笑顔だったのですこしほっとした。
もみくちゃにしている奴らを掻き分けて、腕を取って抱き締めるような度胸は俺にはない。そうじゃなくても周りにはただの上司と部下、それもやや険悪な仲で通っているのに。
だから名前を呼ぶのは暗くした部屋の中だけだ。
普段は。
「総悟」
ようやく散り散りになった野次馬に置いてかれて立ち尽くしていた。
きょとんとしてそれからようやく俺が呼んだと気付いたらしい。
見た事のない顔をした。
弾かれたように駆け出したくせに結局なんの捻りもなく、終着点は自分の部屋だったのは、試されていたんだろうか。
返事はなかったけれど入るなとも言われなかった。
明かりのない部屋をまっすぐ進んで、膨らんだ布団の上にぽんと手を置く。
驚かせない様に徐々に体重をかけて、のしかかる。深く息を吐くのが聞こえた。
そしてくぐもった声。
「・・・気分じゃねーです」
「悪かった」
「すいやせんが、ほんとにそういう気起きねえんで、よそ当たってくだせェ」
「俺がやりてえから機嫌取りにきてると思ってんの」
「違いやすか」
昨日の自分に殴られているような錯覚。
いつもみたいに直接的な暴力ってのよりよっぽど痛い。あんなの駄々っ子の域だったと思い知る。
今度こそ心から後悔した、俺はこれ以上ないタイミングでこいつに深い傷をつけた。
「・・・話がしたい」
「話すことなんて、」
「だって体だけじゃだめだ」
足りなかった。
なにも知らないってことに気付いたし。
はみ出した右手に右手を重ねたら、指ごとシーツに織り込まれた。
続きは布団の中で、囁き声でも逃げないように。耳元に。