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土曜日

各国の要人が一同に会すも目の前に迫る世界的危機に対して万策尽きてしまっているところに涼しい顔で登場した私は現状を打開するただひとつのクレバーな方法を提示する。
「貴様・・・・・・正気か?」「ただちにこの国は・・・いや大陸ごと吹っ飛ぶぞ!」とまあこんなかんじに要人たちにワナワナされたいホンワワワワ~ン
というわけで勇吾を読んだせいで本日の移動中はずっとこんなことを考えていました


折り畳みで小話です。


 



「先日のご褒美ですかィ」出かける支度をしながら、総悟はあのいつもの無表情で俺にたずねた。

なにか褒めること、と考えて、先週の出動の際の、ちょっとした手柄のことだと思い当たった。
しかしそれについては、すでに金一封として正式に、経理に手配していた。
違うといったら、「じゃあお詫びだ」と今度はにいっと笑った。
詫び?なんの。謝ることなんかあったか?
心当たりなどなかった。しかし理由もなくごちそうする、というのも普段の俺の行いを鑑みれば確かにおかしい。じゃあ、と俺は頷いた。
「土方さんにしちゃあ感心だ」
どうやらなにか誤解が生じているらしい。
しかし撤回するのも間が抜けているのでやめた。
どうせ数時間すれば事実はあるべき場所におさまるのだ。


ふぐを食わせてやる、と約束した。
だから夕食は取るなよ。昼間のうちにそう念を押していた。そうじゃなきゃ、仕事終わりにすぐ食堂に駆け込むか、部屋で菓子をむさぼるかするに決まっているから。


どこかで誰かが今年は暖冬だと騒いでいた気がするのに、しっかり冷え込んでいて思わず首をすくめた。
うしろをついてくる総悟も、鼻を赤くしていた。と、俺の視線に気付き、「土方さん、まっしろい顔してやすぜ」と笑った。「鼻だけ、赤い。がきみてェ」
俺は黙って前を向いて、少し早足になった。
総悟の足音が乱れて、またざりざりと砂利を蹴る、規則的なそれに戻った。


料理はどれも旨かった。
繊細な味付けのよしあしなんてわからなくても、薄く花弁のように飾られた白身は新鮮だったし、湯気ののぼる雑炊はとろりとしてあたたかかった。
十二分に満腹になって、店を出た。
以前近藤さんと、接待で使ったので来るのは二度目だったが、それを知らない総悟は、「近藤さんも一緒にくればよかったですねェ」なんて言っていた。
「ねえ?」
「ああ」
「上品で、がっついちゃ申し訳ねえみてえで緊張しやしたが、存分に贅沢したって気がしやす。ごちそうさんでした」
「総悟」
「おいしかったです」
「別れよう、総悟」

この数カ月、ずっと胸のなかにあった言葉だった。ようやく切りだした。
ふぐを食わせたら、言おうと決めていた。
なんでふぐだったかってそりゃ普段から口にするようなものじゃないからだ。
醤油ラーメン食べるたびに面白くない記憶が蘇る、なんてことになるのは、さすがにひどい気がしたから。


「はい。」
総悟の返事があまりにあっさりしていたから、俺はよく聞こえなかったのではないか、とすこし不安になった。
しかし総悟は、ほんとうにわかったのかと聞くまでもなく、「もう、寝ないってことですね」と俺に確認をとるように、見上げてきた。
「そうだ」
「ではここから、別に帰りましょうか。気まずいでしょう」
「ずいぶん物分かりがいいな」
「だって土方さん、お詫びだって言ったでしょう」


心の準備をしていたのだと総悟は言った。
「さよなら」総悟はすたすたと歩き出して、俺を往来に置き去りにした。
まるで俺が振られたみたいだった。
 

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