好きな食べ物はアイスクリームです、と公の場で言ってみろ!ちょっとした袋叩きにあうぞ!
嘘でも「青魚全般、とくに鯵フライなんか好きですね」とか答えておけば好感度アップ。(まだ実践はしていない)
そんな私はアイス大好きです。31のフレーバーならジャモカアーモンドファッジがお勧め。
折り畳みで小話です。
二人でいる時はいつも天井か、そうじゃなければ畳ばかり見せている。
あるいは壁の染み、敷布の絹目。
固く閉じた瞼の裏。
今もそうだ。
骨ばった肩を寝巻きに隠し損ねて深く呼吸している美しい人間は、夜明け前の静けさに退屈している俺の肩越しに、面白くもないだろうに壁を、凝視している。
「今度」
急に話しかけたらさぞ驚くだろうと、こどものような期待をしていた。けれど総悟ときたら、ゆる、と闇間で光る目玉を動かしただけで、きゃっとも言わない。
こういう奴なんだ。
落胆したのが顔に出たのか、それとも単に親切のつもりなのか、総悟が「なんですか」と先を促す。
「今度さ。手でもつないでどっか行こうか」
「どこに?」
「外にだよ。楽しいところ。・・・・・・」
言ってから、しまったと思った。
どうもこれはうまくない。
まったく具体的じゃないうえに、へたすりゃちょっとした、心中の誘い文句のようじゃないか。
総悟はようやく肩が寒いのに気付いたのか、布地を億劫そうに寄せながら、俺にこたえる。
「土方さんは。俺があんたと、そういうことしたいんだって思ってたんですか」
「いいや」
「じゃあ、土方さんの趣味?」
まさか。冗談やめろ、そんな気色が悪い真似、どうして俺が好き好んで。
早口で否定した、俺にかぶせた総悟の「な、わけねえですよねェ」という声は掠れていて、徐々に小さくなってって、俺は朝も早よから本日二回目の後悔をすることになる。
総悟は、「そんな言い方ないでしょう」とも、「あんたが言いだしたくせに」とか絶対言わないのだ。
「もっと優しくして」とか「たまには、」
そう、たとえば、たとえばだけど。
「好きだって言って」とか。ねだらない。
「あの。外も明るいしそろそろ俺、戻りやすね」
「そうだな」
「ありがとうございやした」
三つ指ついて、膝ついて。
総悟が深く頭を垂れる。毎度のことだ。
俺はお前の道具なのか、とひどい虚しさが込み上げる。
一方で、安堵する。
ああ、まだこいつは、一方的な関係だと勘違いしているんだ、って。
抱いてほしいと言われて抱いた。
だけども好きだと言われて、俺は、無言で返した。それきりだ。
総悟のぐしゃぐしゃになった髪の毛が、光に透けてとろけるのを見届けてから俺は、喉の奥から、ありったけの冷静な声で。
「やめろ」
「え」
「そういうの、もうやめろって言ってんだ」
辛抱強い総悟は、「なんですか」って言わない。
もうちょっと待ってて。
今から俺が、いつかのお前に戻してあげる。 PR