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金曜日

ラジオ聞いてたら「次の曲は平均年齢18歳、メンバー全員幼馴染のロックバンドです。なんと驚いたことに彼らは小学生のときにバンド結成したということなんですねー」とかいうから甘酸っぱい感覚に襲われて曲聴くどころじゃなかったです。なんだよお前ら漫画か。


折り畳みで小話です。なんかたまひよづいていて申し訳ない。それと先日のたまひよ話は別に沖田と銀さんが実際に「奥さん米屋です昼下がりの団地妻」みたいな関係なのではなくちゃんと沖田は土方さんにぞっこんラブって設定だからそのへんよろしくお願いします。(ここで過ぎた小話の補足するとか最高にかっこいいにも程がありますね)


この頃土方さんは好色ヒヒ爺のよう。
街ゆく女性を物色しては、目を細めたり溜息をついたりしまいには、電池切れのロボみたいにぴたりと動きを止める。その視線はもれなくねっとりと、湿度がこもっているように見える。

少々問題なのは、そのターゲットがおもに幼子連れだということだ。
つまりは。

「今度の意中の相手は人妻ですかィ」
「あ?」
「好いた惚れたが理屈じゃねえのはわかりやすがそれは人道的にどうかと思いやす」

それなりに意を決して切り出した俺の発言だったのだが。

「あほか」

三文字でかわされた。

「だってそんな物欲しそうなツラして。わかりやした、今日は特別にこれから30分休憩をとりやしょう。土方さんはこれ幸いと駆け出して馴染みの玄人女を口説くなり連れ込むなりしてきなせェ。だいじょぶでさァそうすりゃ人妻へのわーっときた盛り上がりなんてわーっと盛り下がりやす。なあに恋煩いなんて分解してみりゃ所詮は気の迷いと肉欲で片付くようなもんらしいですぜ」

べしんと俺の後頭部をはたく、礼儀知らずの掌はまだ余裕の軽さだった。
図星をさされたときの土方さんのようすとは違う。(焦ってるときの土方さんはかわいそうなくらいにわかりやすいのだ。)残念。

「なんでそうなるんだよ」
「俺の見立てでは、いちど行きずりで関係した人妻の、ほどよくこなれた感が癖になった土方さんは同じ相手とたびたびってのは足がつくかもしれないからって新しい手ごろな獲物を虎視眈々と狙っている、と」
「俺もうそういうのは飽きたんだよ」
「まーたーまーたーぁ」
「ほんとに。枯れた。愛だの恋だのいって女の機嫌とるのも付き合い始めてどっか出かけんのも、最終的に・・・・・・まあいろいろ、めんどくさい」

最後ぼかしたのは仕様です。
たぶん性的な、このへんの話を土方さんは好んではしない。
さすがに今更俺を子供扱いしているというわけではない、と思いたいのだが、R30飲み会のときはそれなりにシモの話もするらしいので、やはり俺に対して披露するのは抵抗があるんだろう。
逆もしかり、俺だって土方さん相手に諸体験がどうのこうの言うのなんて、きもちわるくて耐えらんない。

「でも子供は欲しい」

ぽつんと漏らした土方さんの横顔は、夢でも見ているかのよう。
目がうるんでいる。
ああそうかこの湿度はもしかして、物欲しそうなんじゃなく、人恋しいの、か?

道行く女性のベビーカーのほろの中を覗き込む土方さんのカワイソさをせめて阻止しようと、俺はあいのてを。

「父性でも。目覚めたんですか」
「たぶん」
「・・・・・・うええ。」
「うええって、あのなあ。これってお前のせいじゃないの?」

ふざけんな、と言いかけて、思いなおす。
姉上と近藤さんほどじゃないけれど、面倒みてくれたのはほんとうだ。俺の幼少期に関する記憶から、土方さんのみを抹消するのは無理がある。
それから早幾年、たしかにずっと子守をしているようなものだしな。

「・・・・・・パパ。」

たわむれのひとことだった。
袖をひいて、こびこびにこびて言ってみた、今世紀最大の出血大サービス。

この話は、土方さんの爆笑をもってひとまず、幕を閉じる。
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