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水曜日

隣の部屋で引っ越しというか片づけをしている音がするんですがもう夜ですよ。と言いたい。


折り畳みで小話です。
寝しなにきいたから正確には覚えていないけれど、愛してないんだとか愛が足りないとかそういう意味のことを言っていたと思うんだ。
だから俺は目を覚ましてすぐに、といってもすでに十一時を回っていたけれどサンダル突っかけて最寄りの大丸のフロアを突っ切ってきらめくガラスケースをざっと眺め、考えること少々。
店員とひとっことの会話も交わさず、選んだ細っこいリング。

「なにこれ」
「指輪」
「なんの嫌がらせですか。女物じゃん」

気付かなかった。
だって光り物とか買わないし、いや正確には買ったことはあるけれどたいてい、女が自分で選んだのに金を出す、てパターンだったから違いがあるのをわかってなかった。

「まさかこれつけろとか言わねーですよね」

指の先でつまんでくるくるとリングをもてあそぶ。
不満そうな声のくせ、顔は笑っている。
俺はそんな総悟を、ダイニングテーブルに行儀悪く、肘をつきながら眺めている。

「愛で乗り切れ」適当なアドバイス。
爆笑。二人分の。

「そういうのおれに求めるわけ?ひどい人だ自分のことは棚にあげてさあ」
「伝わってないってのは悲劇だよなあ」
「被害者ぶった」
「愛してるよ?」
「おや。両想いだったんですねえおれら」

くすりゆびで、総悟の指先から華奢な輪っかを掬って奪う。
もちろん関節で止まる。螺旋に飾られたかわいいかわいい銀色の。

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