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水曜日

風邪です。


折り畳みで小話です。


「そう言えば」

車を運転しているときだった。土方が口を開いた。

「お前が結婚する夢を見たよ」

べつにそういう話題でもなかったように思うけれど、と茶々をいれることもなく、沖田はハンドルを押さえながら、耳を澄ました。
ただ、気分だった。

「子供を連れて俺にあいさつに来るんだ。晴れた日に。青い包みに熨斗巻いた菓子折り持ってさ」
「結婚どころかもう所帯持ってんの」
「ああ。まったく薄情だよなあお前はさ」
「夢でしょうよ」
「夢だよ」

「子供、かわいかったなあ」しみじみと、土方が呟く。沖田はどうにも居心地が悪い。
窓の外に逃がしたはずの煙が、風に押されて車内に舞い戻ってくる。沖田はくん、と鼻を鳴らす。これまでさんざん、寸前で拒んできた唇のかたちを思い出す。
たぶらかされそうでも一度として、負けたことはなかったけれど。

「俺も」毅然と。

「似たような夢、見たことありますよ」
「どんな」
「土方さんが別嬪さんと腕組んで、にやにやしてんの。往来だってのにさァ、べたべた人目もはばからずにぐっちゃらぐっちゃら」
「なんだそれ。勝手な夢見んなよ」
「夢ですからねェ」

悪夢だな。
土方が、まるで簡単におとした結論を、沖田は否定できなかった。
うぬぼれるな、なんていったら逆に、墓穴を掘りそうで、ただ黙った。

気になるのは、土方の煙草がそろそろ切れる頃だということ。
 

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